baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 イランの核開発

 イランの核開発が中東を不穏にしている。イランは平和利用が目的と言い張っているが、これは極めて怪しい。イランはホメイニがイギリス亡命から戻って以降イスラム教右派の中でも強硬派が牛耳っており、元々西欧社会からはかなり隔絶してしまっている。しかもイランはシーア派の拠点であり、イスラム教とは本来相容れないイスラム法学者の階級付けや、イスラム教では絶対にタブーな筈の一種の偶像崇拝までしているから、キリスト教社会からは一層理解し難くなっており少々始末が悪い。
 この、西側から見れば少し狂信的なムスリムのイランに対して、イランの核の脅威をまともに受けるであろうイスラエルは、首相自らが核施設への攻撃の可能性を公言して憚らない。地域の安全を脅かすと言うのがその理屈だが、自分達が既に核武装している事は否定しない。自分達の核武装は正しいが、第三者核武装は地域の安全を脅かす、との一方的な理屈である。しかも実際にイスラエルは30年程前にはイラクの核施設を空爆して破壊しているから、今般の攻撃発言も単なるはったりではない。それも他国の領空を侵犯しての空爆宣言である。また以前このブログにも書いたが、イランの核開発の中枢技術者が4名までも、既にモサドの手によって殺害されている
 今般のイランの核開発問題は、イスラム過激派のテロと同様、結局のところその根源は英国による一方的なパレスチナの分割、ユダヤ人の入植、イスラエルの建国、それに続くイスラエルの領土拡大とパレスチナ人への残虐な殺戮である事は明らかである。せめて1967年の安保理決議で定められた国境線までイスラエルが退けばまだしも、イスラエルの領土拡張意欲は留まる処を知らない。その結果、パレスチナ人の犠牲者は膨大な人数に上り、パレスチナ難民は増え続け、未だパレスチナに住んでいる住民はイスラエルの一方的な横暴によって日常生活にも不便を強いられている。しかしパレスチナ人も黙ってはおらず武装組織ハマスによるテロ攻撃で報復しており、数では圧倒的に少ないとは言えイスラエル人の血も流されている。痛ましい暴力の連鎖が続いているのである。
 サダム・フセインクウェートに突如侵攻した時に、国連が米国を中心とした多国籍軍を編成して湾岸戦争を起こし、イラク侵攻軍を徹底的に叩いてイラクを押し戻した時のフセインの理屈は、イスラエルは1967年に定められた国境線を守らずにパレスチナに侵攻しても国連は一向に武力制裁を加えない、イラクも同じ事をしているだけなのに、どうしてイラクだけ武力攻撃されるのか、国連は不公平ではないか、と国連を批判した。とんでもない屁理屈で、そんな理屈でイラククウェート侵攻が正当化される道理はないが、しかし国連が不公平であると言う指摘はその通りである。実際には国連が不公平と言うよりは米国が不公平なのであり、その米国に欧州や日本が追従しているのである。日本にいれば日本のメディアが欧米べったりだから、イスラエルのイラン空爆発言もそれほど奇異には聞えない。或いは、このイスラエルの発言を前提にしたオバマの外交による解決の呼び掛けにも、共感は感じても違和感は湧かない。
 しかしこれが立場が逆であったら、即ちイランがイスラエル核兵器貯蔵所を空爆すると公言したら、米国に限らず欧州も一斉に大反発するであろう。恐らくは日本人もイランに強い反感と嫌悪を感じる事であろう。そして、現行の対イラン経済制裁どころでは終わらず、多国籍軍が編成されてイランに対する先制攻撃が行われたとしても不思議ではない。現実はそのぐらい不公平だと言うことである。ただ忘れてはならないのは、イスラム教は世界中でアラビア語と言う共通語で礼拝をしている、国境や民族を越えた連帯感を共有する宗教だと言う事である。それは、パレスチナを一方的に蹂躙するイスラエルとそれをバックアップする米国が、パレスチナ人のみならず世界中のイスラム過激派のテロの標的になっている事からも分かる。従い現在のイランとイスラエルの緊張関係に対処するに際して、少しでも欧米がイスラム教を不当に扱ったという印象を持たれた時には、西側は世界中のイスラム教徒を、例えテロを実行する過激派は極く一部だとしても、敵に回す事になる。
 僕は別にイスラム極右のイランを支持するものではないし、核兵器には本能的に反感を覚える。しかし核兵器を既に所有する国が、これから所有しようとする国を一方的に押さえ付けようとする、自国の武力的優位を一方的に護ろうとする論理には無条件には同調出来ない。更に日本を顧みた時に、ロシア、中国、そして北朝鮮も予備軍として、核武装をしている国に北と西側を囲まれている現実を認識すれば、ただ能天気に核兵器に反対していれば良いとも思えない。その延長として、良し悪しの議論は別として、イスラエルの暴虐に対して何らかの予防措置を取ろうとするイランの気持ちも分からないではない。
 中東での暴力の連鎖と政情不穏を断ち切る為に、国連が中心となりイスラエルの領土拡張を1967年の国連決議ラインまで押し戻し、イスラエル核武装も解除し、当然イランの核開発も平和利用に限定し、IAEAの査察が自由に入れる環境が出来ないものか。しかし現実には米国議会をユダヤ人の金権から解放し、国連の常任理事国から拒否権を剥奪しなければならない訳だから、これは夢のまた夢なのであろう。と言う事は、いつまで経ってもイスラム社会と欧米との衝突が終わらないと言う事になる。大量破壊兵器などと言う大嘘の宣伝を掲げて、十字軍気取りの多国籍軍が再び狼藉を働かなければ良いのだが。