baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 安定就業5割未満

 2010年春に大学や専門学校を卒業し、更に進学した者を除く78万人の半数以上が安定就業していない、或いはしないだろうと言う内閣府の調査結果が発表された。
 先ず、就職出来なかった者が211千人、78万人の就職希望者に対して27%もいる。中には就職希望と言いながらもそれ程真剣でなかった者も含まれているかも知れないが、大多数は就職先が上手く見付からなかったものであろう。企業が国内投資を控えている現状が如実に反映されていると言える。更に、何かと言うと大企業から絞り取ろうとする政策が鮮明な民主党政権下では、誰も大っぴらに公言しないが当面は正規社員の雇用は出来る限り絞りたいと言う本音もあろう。実際民主党が政権を取って以降は、健康保険や年金問題の財源は常に大企業とその従業員が真っ先に狙われている。健保にせよ年金にせよ大企業にも公平な制度設計と、何よりも国内産業の空洞化を阻止する具体的な政策を実行しない限り、就職率の低下傾向は止まるまい。
 国内産業の空洞化阻止についてはもう何度も本ブログで訴えているので、今日は省略する。今日問題提起したいのは、3年以内に離職する者が、就職した569千人の35%、199千人もいると推定されている事である。政府は企業と新卒のミスマッチと言うが、僕に言わせれば圧倒的大部分はミスマッチではなく新卒側の甘えが原因である。
 日本の伝統では、仕事で役に立つ実践的な技術や知識は企業が仕事を通して教育する。実際、大学出たての新卒は当分は肉体労働以外は使い物にならないのが普通である。語学にしても、外国語で仕事が出来るレベルの人間は、留学組を含めても新卒には先ずいないと思っていた方が良い。それで先ずは新入社員研修で、自分達が如何に世間知らずの無能であるかを知らしめる。実務研修は基礎研修の域を出ない。所詮実社会での経験がない新人に、いきなり実戦教育をするのは時間の無駄だからである。企業側は、焦らずに仕事をさせながら徐々に教育する事になる。だから企業にしてみれば、新卒は雇用してから3年位は持ち出しなのである。その間に離職されてしまえば、それまで掛けた経費は丸損と言う事になる。職種にもよろうが、この図式は大体どんな職場でも共通なのではなかろうか。
 バブルが崩壊し雇用の流動化が始まって以降は、僕の周りでも新卒で取った新人が随分辞めていった。こちらとしては未だ元を取っていないから出来ればせめて元が取れるまでは居て欲しいし、そもそも辞めてもそう簡単に次の職が見付かるとも思えないので親心から一応慰留はする。その際当然理由も聞くのだが、ほぼ異口同音に自分がやりたい仕事ではなかったと言う。ではどんな仕事を夢見ていたのか問えば、たまにしっかりした考えの者もいるが、大概は極めて観念的で現実味が薄い話ばかりである。そんな考えでは世の中に気に入る仕事などあるまいよ、と思いながらも無理強いして在籍させても元が取れる保証もないし、例え心変わりしたところでそれが何時まで続くかも分からないから結局は辞めさせる事になる。
 この現象をミスマッチと言うのならミスマッチかも知れないが、企業側が余り新卒に迎合すれば、将来的に使い物にならない人間が増えるだけの事だと思う。現実は、辞めて行く者の多くが世間の辛さを理解していないのである。生活の糧を稼ぐのが如何に簡単ではないかと言う事が理解出来ていない。親が一生懸命働いて大学まで出して貰った事が、どれ程親にとっては大変な事であったかが分かっていない。周りの友人も皆一緒だから、まるで当然の事として受け止めて来てしまっているのである。だからいざ、自分で金を稼ぐ段になると、もっと甘い仕事がある筈だと夢見てしまう。実際、昨今はアルバイトで小銭を稼ぐのはそれ程難しい事では無くなって来ているから、この風潮に拍車を駆けてしまう。しかし、生活の安定が保証されている処で小銭を稼ぐのと、生活の基盤を築くのとでは天と地の差がある。
 少子化で一人、二人の子供を手塩に掛けて育て上げ、高等教育を受けさせるのは、それはそれで大いに結構である。親が出来る限りの事を子供にしてやるのは本能でもあるし、決してそれが悪い事ではない。子供がしたいだけ留年させる親もいる。それも、子供の側に明確な目的があり、親の側もそれ程無理なく希望を叶えてやれるなら悪い事ではない。しかし子供が巣立つ前には、世間は世知辛い事、生活の糧を稼ぐのは並大抵ではない事、仕事と言うのはその時その時は苦しみばかりである事、何よりも物事には辛抱が肝要である事、などをしっかり教え込んでおかねばならない。そういう前提で働いて初めて、時として仕事に遣り甲斐を感じたり、喜びを感じたり出来るのではなかろうか。僕に言わせれば、この離職者の多さは、欧米的な転職が一般的になって来たと言うよりは、新卒者の辛抱が足りないのが理由だと思えてならない。その根本は、結局は親の躾けが甘かったと言う事になる。