baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 AIJ問題

 昨日の衆院委員会はAIJの浅川和彦を参考人招致した。テレビをずっと観ていた訳ではないが、チラと見た印象は今迄新聞に載っていた顔写真よりは随分と老けて見えた。新聞報道によれば、衆院での答弁では「元々騙すつもりはなかった」だとか「7000万円の年収については疚しい事は何もない」だとか、厚顔無恥に強弁していたようである。しかし、この男が故意に犯罪を犯していた事には議論の余地はない。しかも非常に悪質である。その上、運用に大穴が開いているいるのを承知で年収7000万円を取り、更に財務担当の女性役員には4000万円からの給与を払っていたと言うのだから、例え横領と言われても仕方がない。
 同様、監査する立場にあったアイティーエム証券が、監査資料を一切チェックする事無く浅川の言いなりになっていたと言うのだが、これは俄には信じ難い。恐らくは最早逃れようのない浅川に全責任を押し付けて、自分達だけは追及の手を逃れようと言う魂胆であろう。実際、AIJの運用が大赤字だった事が分かる立場にいながら、一切知らなかったという説明は全く説得力に欠ける。真相は、実体は正確に把握していたが、アイティーエム証券もAIJの営業をしていた手前、実体を顧客には公開出来なかったものであろう。アイティーエム証券の西村秀昭が従犯である事はまず間違いあるまい。
 その結果中小企業を中心とした厚生年金基金の損失合計は約1100億円に上るそうである。AIJに騙された企業も気の毒だが、それ以上にその基金を老後の頼りにしていた基金の受益者には本当に気の毒な事である。バブルが崩壊して、基金の運用成績が上がらないのは何処も同じである。だからと言ってOBの年金を勝手に減らす訳には行かず、減らそうとしても受給者からの同意はおいそれとは得られず、企業の負担を増やそうにも経営が苦しくてままならない、等々企業は三重苦、四重苦なのである。しかし、そういう時ほど、基金の運用担当者は気を付けなければならない。世の中には甘い話は100%存在しない。博打を打てば当たる事はある。でも、博打も均せばほぼ間違いなく損の方が大きい。さもなければ胴元が成り立たない。だから、使う当てのある金、借りていて何れは返さなければならない金、他人の金、では絶対に博打を打ったり怪しい話に乗ってはいけない。冷静な時ならば誰でも分かっている世間の理屈である。
 浅川和彦や西村秀昭は、或いは恐らくAIJの財務担当役員も、これから刑事々件として捜査を受けるのは仕方がないし、その結果は実刑判決になっても少しも不思議ではない。如何贔屓目に考えても、罰を受けて当然の事をしている。また基金の運用担当者にも、幾ら口車に乗せられたとは言え、ある程度の制裁を受けても已むを得ない落ち度がある。しかし全く与り知らぬ処で大損害を蒙っているのが、基金の受益者である。老後の頼りにしていた年金が、下手をすればまるまる消えてしまう。その為、民主党内部には公的資金で救済しようと言う動きがあると言う。しかし、被害者が気の毒なのと、公的資金を投入するのとは次元の違う話である。基金の運用は飽くまでも、基金なり企業の自己責任の範疇であり、国が税金を投入して救済を云々する話ではない。何かと言えば直ぐに公的資金注入などと有権者受けを狙うバラ捲きの発想は、民主党議員にはもうそろそろ卒業して貰わねばならない。
 しかし、バブル期に出来た公的年金の代行制度は見直すべきであると思う。現行の厚生年金基金が同業者組合的な性格で作られており、国からの代行部分の借り入れは、この基金の組合員である企業全てが連帯で保証しなければならない、と言う制度の事である。バブル崩壊までは、運用資金が大きければ大きいほど利益が出たから問題にはならなかった。しかし今の様に経済が低迷していると、代行部分の運用益がマイナスのまま倒産する企業は珍しくない。すると同一の厚生年金基金に加入している残りの企業が連帯して、この倒産企業のマイナス分を国に対して補填しなければならない。ところがその補填が重荷となって、連鎖倒産が出て来ていると言う。すると更に少なくなった生き残り企業に、残債が全て被さって来るので、生き残った企業は益々苦しくなる。こういう悪循環を招く現行制度には無理があると言わざるを得ない。如何なる事情があれ、貸し付けはやはり国のリスクで企業毎に審査して決めるべきではなかろうか。その時、信用保証協会の様な第三者保証機関の保証を付けるようにしても良い。しかし企業年金の早期健全化の為にも、同業他社の連帯保証と言う制度は早急に廃止すべきであると思う。