baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ZX-14R来たる

 僕の生涯最後となる予定のバイクが昨日納車となった。丸2ヶ月で入荷したから、予定より半月余り早まった。決めたのは1週間前で、それまでは買おうか買うまいか随分迷った。資金はバイク2台を下取りにして、更に絵を1枚付ければ充分賄える金額なのでお金の問題ではない。今更こんな高価な玩具を買って、一体何時まで乗れるだろうか、贅沢に過ぎないだろうか、と言う自問である。最後に背中を押してくれたのは、今まで10年間乗ってきたZZR-1200のエンジンが、微量ながらもオイル漏れを起こした事であった。チェーンも延びているし、これからあちらこちらを相当大掛かりに整備しなければならなくなりそうな事がはっきりしたのである。
 6月までは無理だろうと諦めていたのが突然入荷したとあれば、今度は出張前に是非受け取りたいのが人情である。登録やETC取り付けを兎に角急いで貰った。随分無理を言ったのだが、何とか昨日の納車に間に合わせてくれた。そこで昨日はZZR-1200を持ち込んで、替わりに新車を引き取って来た。前から言っているZX-14R、欧州ではZZR-1400と呼ばれるバイクである。ZZR-1200の血を引いているから外観は良く似ている。フロントフェンダーとマフラーはGTR1400のDNAである。

 エンジン音はGTR1400のそれだが、レスポンスもパワーも全くの別物である。音は静かで、ZZR-1200の様な低い唸り声は発せず、自分のバイクの音が良く聞こえない。そして乗ってみればハンドリングは軽快で、しかも圧倒的なパワーがあるので楽な事この上ない。コーナーでの安定感は抜群である。ブレーキの効きも非常に良い。ただライディング・ポジションがZZR-1200よりも更に前傾ががきつくステップも高いので、長時間のツアーは少しくたびれるかも知れない。運転が楽な事と相殺されれば良いのだが。一つ不安なのは、今度のバイクにはガソリンのリザーブタンクが無い。ガソリンが無くなったら即エンストになる。今までは4ℓ位は別勘定で分けてあったから気楽だったが、これからはそういう訳には行かない。車と同じになってしまった。
 今朝は早々とワックスを掛けてから、ピカピカの新車に跨がりご機嫌で秩父に向かった。初夏のような陽気である。今の秩父は新緑が眼に眩しい。

 秩父の先の踏切で、珍しく足止めを食った。ところが何時まで経っても電車が来ない。少し可笑しいなと訝しく思い始めた時に、何と蒸気機関車が客車を引いて目の前を通り過ぎた。これは写真を撮らない手はない。幸いその先は暫く道と線路は平行して走っているので、踏切が開くや否や追いつけ、追い越せと少し飛ばした。汽車の姿は見えないが、茶色い煙が空にたなびいているので凡その居場所は見当が付く。追い越して、少し引き離したので何処に駐めようかと駐車場所を探していたら、カメラを手に手に一団の人達が屯している場所に出た。間違いなく蒸気機関車を待っているものであろう。僕は即座に道端にバイクを放り出して、走ってその一団に潜り込んだ。その時、蒸気機関車が木陰から現れた。急いで写真を撮ったが、撮れたのはこの1枚だけで、他の写真は後姿や客車しか写っていなかった。

 雁坂トンネル甲府側に出ると直ぐの左手に、雁坂峠の登山道入り口があり、そこに小さな社が建っている。その社のしだれ桜が調度満開であった。

 連休直後だから道は空いていると高を括っていたが、今日も帰りの高速は相当の渋滞らしい。甲府から20号に出て、途中で桔梗屋の「信玄餅」を買って、高速に乗らずにそのまま20号を走った。そして、突然思い付いて甲斐の手前から大菩薩峠を巻いて411号に出、奥多摩を抜けて青梅街道で帰って来た。青梅街道はそれ程混雑もしておらず、正解であった。何よりも大菩薩峠の道では殆ど車にも会わず、ワインディングを気の向くままに堪能出来たのが幸運であった。もっとも今日は慣らし運転で、エンジンは4000回転以上は上げられないので、温和しいものであった。それにしてもこの10年で、バイクもご多分に漏れず大変な進化を遂げていると改めて感服したものである。総行程は331kmだが、ずっと下道を走っているのでまあまあであろう。