baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 今インドネシアを賑わしているニュース

 ここ数日、連日テレビを賑わしているニュースはスホイの墜落事故とレディー・ガガの公演中止である。
 レディー・ガガは東京公演のあとアジアツアーの一環でジャカルタにも来る予定であった。ところが一昨日、国家警察が公演を許可しないと発表した。その表向きの理由は安全が保証出来ないから、と言う事である。しかし実態は、過激なイスラム団体がレディー・ガガの公演は「ポルノショーもどきである、下着でステージに出てくるような歌手は若者への悪影響大で断固許せない、どうしても公演を強行するなら実力行使も辞さない」と抗議した事に端を発する。そして警察の保守派がこれに同調したもののようである。実際には未だ公演が中止と決まった訳ではないらしい。この辺りが極めてインドネシア的で、国家警察もこの二日で少し腰が砕けて、着地点を探している雰囲気がなきにしも非ずである。
 と言うのは国家警察の決定に対してメディアはこぞって猛烈な反対の意思表示を始めたのである。昨日のテレビなどはどのチャンネルを見ても、一様に警察と過激イスラム団体の批判である。曰く「インドネシアは多様性の国ではなかったのか」「インドネシアイスラム国家ではない。クリスチャンも仏教徒もいる。どうして極めて限られたイスラム団体の声が通るのか」「イスラムは本来そんなに頑迷ではないはず、イスラムの恥である」等々。更に、ジャカルタにはダンドゥットゥと言う伝統的なリズムの、踊りを交えた歌があり、ジャカルタの人間にダンドゥットゥ嫌いはいないし、当然の事ながらダンドゥットゥ歌手には人気歌手が沢山いるのだが、「最近のダンドゥットゥ歌手の服装や振り付けはレディー・ガガと大して変わらないではないか、いやもっとポルノチックな踊りをする歌手もいる」と言う反論まで現れた。映像を見る限りでは、成る程結構際どい線を行っているようにも見える。
 僕の周りのイスラムも異口同音に「インドネシアの恥である」「確かにレディー・ガガの服装は過激ではあるが、独創的だからそれで良いではないか」と言った意見が老若男女を問わず圧倒的である。興業側も服装を一般から公募するとか、色々知恵を絞って応戦したようだが警察の天の声には今の処叶わないようである。4万枚用意したチケットが既に3万枚売れているそうであるから、このまま公演が出来なくなれば興業主には気の毒な事である。公演中止の件は日本でも報道されているので敢えて言うが、少なくとも僕の知る限りではインドネシアでの一般的な意見による中止ではなく、むしろ今回は極く一部の人間の偏った声が通ってしまったようである。
 スホイの墜落事故は連日特番でやっている。余りにも不可解な事が多いと異口同音である。天候は良好で、機体はロシア曰くは最新鋭機、パイロットはベテランだから、墜ちる理由が見当たらないと言う訳である。そして早速ロシアから調査団体が乗り込んできて、ブラックボックスはロシアに持ち帰って解析すると言い出したからインドネシア側は一層強硬になっている。そのブラックボックスがやっと昨日見付かった。ブラックボックスの解析が始まればかなりの事情は遠からず解明されるであろう。ロシアは飽くまでもブラックボックスは自国に持ち帰る事を主張しているらしいが、インドネシア側がインドネシア領内での事故なのだからインドネシアに調査の権利があると断固譲っていないから、恐らく今のままならインドネシア側が解析を始める事になるのであろう。
 テレビでは評論家、識者、専門家、パイロットなどが百家争鳴で口角泡を飛ばしている。曰く、インドネシアではまだ型式証明も取れていない航空機に招待客を乗せるのは本来許されない筈である、招待客という一般人が搭乗している飛行機がアクロバットまがいの飛行をするのは異常である、搭乗者にシャンパンの大盤振る舞いをしていたがパイロットも酔っていたのではないか、高い山がある地域で管制官が許可していないのにどうして突然急降下したのか、等々次々に問題が提起されているのである。生憎色々なインドネシアの政府機関の名前がアルファベットの省略形で出てくるので、僕には全ての話しには付いて行けないのだが、全体の論調としてはロシア側の責任を問題視しているのは明白である。それはそうであろう、インドネシア側に責任があるとすれば管制塔の指示誤りしかないのだから。ロシアももう少し低姿勢に接すれば良いものを、相変わらず自分は大国でインドネシア後進国と見下しているようである。