baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 加齢と言う事

 更新が少し前後するが、一昨日3年2ヶ月ぶりにバイクの学校へ行った。前置きが少し長くなるのだが.....
 ホンダが本田宗一郎の初心を受け継いで、未だにホンダ・モーターサイクリスト・スクール、略してHMSと言う学校を全国で5−6ヶ所位だろうか、展開している。東京の近くでは埼玉県の桶川と、栃木県の茂木にある。勿論我が家からは桶川が圧倒的に近い。バイクで往きは50分、帰りは70分と言った処であろうか。本田宗一郎が、ホンダはバイクを売るだけではいけない、バイクを安全に乗って貰い楽しんで貰う為のアフター・サービスもしなければいけないとこのスクールを開校し、その精神が脈々と現在に到るも引き継がれているのである。
 バイクは車と違って、免許が取れたからと言って直ぐに乗れる代物ではない。走っていなければ倒れる乗り物だし、走っている時にはハンドルは効かない、止まるのが難しくて下手に止まれば転倒する、曲がるのは上手い人と下手な人では月とスッポン、等々際限なく奥が深い乗り物である。それだけに練習すればするだけ腕が上がる乗り物でもある。その練習にはHMSは打って付けなのである。バイクは貸してくれるから倒しても問題ない。インストラクターは何れも同じバイクを操っているとは思えない程の超人的な腕前で、一人一人に親切にアドバイスをしてくれる。プロのレーサーもフォームのチェックにやって来る。僕は免許取り立ての人間や、リターンライダーには迷わずHMSに行く事を勧めている。素直に僕の勧めに従うような男は、大体自分が如何に未熟なライダーであったかを身に滲みて実感して帰って来る。そして自信が付くまで何度か足を運ぶ事になる。
 僕はここ数年、少しバイクに乗るのが億劫になっていた。今思えば体力に見合わない1400GTRと言う大きなバイクに乗っていたのが間違いであった。このバイクは長距離を走るには一向に疲れを感じさせない素晴らしいバイクだったのだが、僕には大き過ぎて、足は届かないし重くて取り回しが大変で、知らない山道などでは何時も行き止まりだったらどうしよう、ガレ場になったらどうしよう、などと今思えば内心は少し怯えながら乗っていたのである。そのバイクを正月明けに、寂しかったけれども思い切って手放してしまったら何かが吹っ切れた。余波を駆って10年乗ったZZR-1200も手放して、最新型のZX-14Rに乗り換えたのが転機になった。またバイクに乗るのが楽しくて仕方がなくなった。そこで久し振りに、現在の実力をチェックしにHMSに行ったと言う次第である。
 以前は中級クラスにも随分顔を出していたが、今回は謙虚に初級クラスに申し込んだ。初級だから余裕綽々だろうと、高を括っていた。事実、初めの中は余裕であった。ところが途中から、窮屈な事をやらされ始めた頃から、すっかり余裕がなくなっていた。数年前ならどうと言う事も無いターンがヨタヨタと大回りになってしまう。こんな筈ではないと焦るのだが、どうしても以前の様には上手く行かない。昼食を挟んで午後のコースになったら、もういけない。昼前よりも更に窮屈なコースを走らされたら、もう走れないのである。3回もひっ繰り返り、フーフー言いながらバイクを起こし、めげそうになってしまった。インストラクターが気にして色々アドバイスをしてくれた。
 僕だけ一息ついて、インストラクターのアドバイスを噛みしめて、少しイメージを思い出した。改めてチャレンジしたら、今度は徐々に上手く行き出した。別のインストラクターが従いて来て、一周終わったところでニッコリと「もう大丈夫ですね」と言ってくれた。それからは昔取った杵柄を思い出しながら、あっという間に大分上達したと思う。体が思い出したのである。結局は無事に最後まで若い人達に混じって練習を終えられた。内容的にも、未だ不満足ではあるけれど、最後は僕なりにはまぁまぁの処まで漕ぎ着けたと思う。
 そして実感したのである。ここ数年バイクにのるのが少し億劫になったからと言って、決してバイクに乗っていなかった訳では無い。ツーリングに出掛けても、そうそう人後に落ちるライディングをしていた訳でも無い。だから自分では未だ未だ乗れると自負していたものである。ところがHMSなどでこうして自分を試してみると、以前出来た事が明らかに出来なくなっている。バイクを起こすのが酷く重く感じるようになっている。これが紛れもない、加齢の証なのだと実感させられた。それでも今回は、最後には何とか回復できたから未だ良しとしよう。
 バイクは素晴らしい趣味であると同時に、一歩間違えば他人に対する凶器ともなる乗り物である。これからは時々HMSで実力を試しながら、他人に危害を加える事がないように見極めながら乗り続ける必要があると、改めて実感したものである。