baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 オスプレーとオートジャイロ

 米軍のオスプレーがまた米国本土で緊急着陸したと言う。モロッコで米軍兵士が4人死亡した墜落事故は経験の浅い操縦士の操縦ミスだったという検証結果だが、追い風と言う悪条件下での操縦ミスだったそうである。さらにオスプレーの導入時に技術検証した人間は、非常に操縦の難しい航空機である事は当初から分かっており、特に作戦行動の際には相当の事故率である事を予測していると言う。追い風程度で墜落するのだから、攻撃されたら一溜まりもない事は容易に想像出来る。先日もオスプレーの普天間配備は見合わせるべきだと書いたばかりであるが、それから一月しか経っていないのにまた緊急着陸事故である。そして先日僕が危惧したローター角度が45度前後での姿勢制御の困難さは、米国の専門家も認めているそうである。素人が見ても危なっかしい物は、やはり実際に危ないのである。他に今の処効率的な代替品がないから米軍はオスプレー配備に固執しているが、兵員の損耗を織り込み済みの軍事思考は平和な日本には全く馴染まない。強行して民間人に万が一にも犠牲者が出るような事になれば、在日米軍反対の機運に火を点けるだけである。米軍も大所高所から日本の現状を冷静に分析して、早計なオスプレー配備は見送るべきである。特に、米軍ですら世界一危険と認める普天間は大惨事を招きかねない。
 追い風が墜落の原因になると言う事が、この航空機の操縦の難しさを如実に示している。追い風で主翼の揚力が減衰したものであろうが、普通の航空機なら追い風で揚力が減衰したらスピードを上げれば良く、いざとなればノーズダイヴすればスピードは自然に上がるから、機首が上がる程失速しなければ簡単に墜落する事はない筈である。ところがオスプレーの場合はこういう時にはノーズダイヴもローターが邪魔をして難しかろうし、フラップの類も付いていないようにも見えるので、想像するに先ずはエンジンの回転を上げる位しか方策が無いのだろうが、相手が空気だと車の様に直ぐに反応する訳では無いから中々理屈通りには行かないと思う。あれやこれや、考えれば考える程構造上に無理のある航空機だと言わざるを得ない。
 こんな事を考えていると、どうしてオートジャイロがもっと脚光を浴びないのかが不思議で仕方がない。僕は別にオートジャイロに詳しい訳ではなく所詮聞き囓りだから認識が誤っているかもしれないが、どう考えてもオスプレーよりは格段に優れていると思う。オートジャイロは垂直離着陸はできないので短い滑走路は必要だが、そんなに長い物は不要な筈である。しかも平坦であれば舗装も要らないと思う。従い、海兵隊の用途にもかなり適合していると言えよう。スピードは音速は超せないが、理論上は亜音速は可能だと聞く。この点だけでも、ヘリコプターよりは遙かに優れている。しかもスピードのみならず、積載能力、航続距離も航空機と同等だからヘリコプターよりは遙かに兵站に適している。それが、これだけ技術の発達した今になっても何故表舞台に出てこないのかが不思議で仕方が無いのである。
 世間には、オートジャイロは不安定で危険であると言う一般的な認識がある。実際、海外で個人用のオートジャイロが頻繁に墜落した事があるらしい。しかしそれは設計に力学上の欠陥があったからであって、オートジャイロの本質的な欠陥ではないと聞く。元々マニアの玩具なので、いい加減なキットが安易に販売されたものの様である。しかし、こういう趣味のレベルの話では無く、正規の航空機として改めてオートジャイロのメリットを評価し直すべきではなかろうか。オスプレーの様な危険な航空機に需要があり、実際に配備され、戦闘地域にも投入されているのであるなら、オートジャイロの如き理論的に高い可能性を秘めた航空機が何故実用化されないのかが不思議で仕方が無いのである。単なる輸送機として現在の航空機とオートジャイロを総合的に比較すると、何う言う結果になるのかは僕には分からないが、短距離々着陸のオートジャイロ型大型輸送機を実用化したら、少なくとも軍事上は非常にメリットが大きい筈である。専門家の意見を是非聞きたいものである。