baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 小松空港で

 昨日から仕事で金沢に行っていた。金沢に行くと必ず夜は香林坊か片町で沈没してホテルに戻るのは2時か3時になるのだが、前の晩になでしこジャパンを観て結局明け方まで起きていたのが祟って、夕べは流石に夜中前にはホテルに戻った。猛烈な睡魔に襲われていたが、それでも気になってテレビを点けたら男子サッカーがなんとスペインに1−0で折り返しているではないか。正直なところ吃驚した。結局最後までは目が開いていなかったが、その後も何度か相手ゴールを脅かして惜しい処まで押し込んでいたのは覚えている。日本のサッカーは本当に強くなったものと改めて感心した。
 金沢も例外なく連日の猛暑である。仕事は昼前に終わったのだが、この暑さではウロウロする気力もなく、少し早めに小松空港に着いた。しかし幾ら何でもそのままラウンジに直行するには早すぎるので、少し空港の中をウロウロしていたら、小松基地自衛隊機と小松に発着する民間機の模型が展示してあるコーナーがあり、そこの壁には何気なく屋上に出ると自衛隊機が見られると書いてある。もう数え切れぬ程小松空港へは行っているが、今までは展望デッキへ出る事など思いも付かなかったし、こんなコーナーがある事すら知らなかった。幸い今日は時間が有り余っている。そこで、生来飛行機が大好きな僕は、暇つぶしに屋上へ出る事にした。大人50円、子供30円である。随分と安い。階段を上がってデッキに出たが、炎天下の昼下がりなので殆ど人影はない。マニアらしい人が一人離れて、400mmの望遠レンズを点けたカメラを構えているのが目に付いた。
 僕は運が良かった。調度F15が訓練に飛び立つところで、駐機場にはエンジンを点けた期待が6機並んでいた。そのうちに先ず2機がスルスルと滑走路に出て来て離陸待機体勢に入った。突然空ぶかしの轟音がし、また静かになったと思ったら間もなく再び轟音が轟いて、1機が滑走を始めた。物凄い轟音で、どういう理屈か音が後からも聞こえてくる錯覚に陥る。と見る間に離陸した。滑走距離は酷く短く、遠目には300m位しか滑走していないように見える。すると2機目も15秒か20秒遅れで滑走を始め、あっと言う間に離陸して行く。民間機はジェットエンジンの吹き出す乱気流が危険なので、最低でも2分位の間隔を開けると思うのだが、流石に戦闘機はそんな悠長な事は言わないらしい。立て続けである。
 2機が消えてしまうと、また3機目、4機目が滑走路に入って来て、同じようにあっと言う間に離陸して行く。離陸する時にはアフターバーナーでも炊いているのか、バックファイヤーを吹いている機体もある。そうして6機のF15が飛び立ったら、今度は小型の飛行機が2機出て来た。これは少し間を開けて、1機づつ飛んで行った。加速は流石にF-15程ではないが、滑走距離はほぼ同じぐらいで離陸して行く。先程のマニアらしい人に訊いたら、T-4という複座の練習機だそうである。自分が写した写真を見て、間違いなく乗員が二人いると確認してくれた。肉眼では分からないが、F-15にも複座が混じっていたそうである。
 若い学生のようだが、すっかり日焼けしている。訊けば名古屋から来ていて、もう2日になるそうである。新田原から来ている、特殊な塗装を施してあるF-15の教官機をさっき撮ったと嬉しそうであった。感じの良い若者であったが、僕は余りに暑いので別れて冷房の効いている建物に戻った。彼は未だ展望台で頑張っている。別の飛行機が離陸するのを待っているのか、先程の飛行機が訓練を終えて戻ってくるのを待っているのか。外から滑走路の近くへ行って写真を撮りたいとも言っていた。僕は小松ではF15が飛んでいるのは時々見るし、大分以前に民間機が着陸した横をF4が2機スクランブルするのを出発ロビーから見た事はあるが、こうしてゆっくりとF15の離陸を間近で観察したのは初めてであった。おまけにT-4まで見ることが出来たので、今日は何だか凄く得した気分がした。兵器であると思えば複雑だが、徹底的に機能だけを追求した戦闘機のフォルムは美しい。写真を撮り続けるマニアの気持ちが良く分かる。