baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 労働者の日

 当地に来てみれば今日は「労働者の日」だそうで、大きなデモで交通は麻痺すると言われてしまった。昔はそんな日はなかったのだが、民主化が進んでいるインドネシアでは、徐々に労働者が権利の主張をし始めている。今日のデモはジャカルタ中心部で25千から30千人、ジャワ島全土ではその10倍ぐらいの労働者が参加するとの予想であった。
 工場は8割方操業停止となり、当地の人は今日は極力出歩かないようにしている。そこで僕のアポイントも、普段なら相手の事務所に行くところが今日は近場のホテルで面談したり、相手が僕のホテルに来てくれたりで酷く効率が良かった。その上皆が不要不急の外出を控えているので、ジャカルタ市内の交通はむしろ普段よりも遙かにスムースである。昨日からだそうだが、やっとジャカルタも雨期らしい天気になり、夕方になると雷、突風、スコールに襲われ、普段なら交通が麻痺してしまうのだが、今日はそんな土砂降りにも拘わらず交通はスムースで、大混乱を覚悟していた分むしろ拍子抜けしてしまった。
 今日のデモのスローガンは「契約社員廃止、派遣社員廃止」だそうである。まるで日本の共産党社民党のスローガンと同じなので、裏に共産党でもいるのか訊いたが、そうでもなさそうである。ただ、日本では同じ運動がここ数年盛んではあるが結果は労働市場が鈍化し、失業率が上がっている、緊急に仕事が必要な労働者に仕事が回ってこなくなっているという、最近の日本の労働市場について説明をした。僕の話相手は経営者側の人間だったのだが、インドネシアでも人を雇う時に正規雇用であれば極力人数を減らしたいので、例え注文を断ることになっても正規雇用を増やすのには慎重にならざるをえない。正規雇用だと社会保障や退職金など頭の痛い問題が多々あり、景気が悪いからといってレイオフもままならない。だから、斯様な日本の現状は非常に良く分かるとの事であった。
 契約社員派遣社員の雇用に伴う規制強化は一見労働者の条件改善になるように見えて、実態は派遣社員契約社員の雇用機会が大幅に減り、尚且つ正規社員は派遣社員、短期契約社員と一緒にされるのを嫌うから、派遣社員や短期契約社員の労働条件悪化に繋がりかねない流れなのである。共産党社民党も、正規社員の労働組合が票田であるから、その他大勢の不安定労働者の事は二の次なのであろう。同じ動きがインドネシアでも既に顕在化している様である。何が本当により良い形なのかは一言で言うのは難しいが、一旦流動化してしまった労働市場は簡単には元に戻せないのだから、安易に一部の正規社員のみを優遇するが如き条件闘争は慎むべきであると改めて思わされる今日の労働者の日であった。