baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 相続税見直しに一言

 政府税調が2013年度税制改正を、今月24日にも取り纏める方向で動き出したと言う。歳入が抜本的に足りない現状、更には法人税が伸び悩んでいるのだから、富裕層からの徴税を厳しくするのは洋の東西を問わず已むを得ないであろう。ただ、富裕層を共産党社民党の様にただ目の敵にするのでは国が立ち行かなくなるから、富裕層と雖も日本人として富裕層なりに、日本の良さを嗜める程度の余裕は残しておかないと日本から富裕層がいなくなる。富裕層だって、余りに徴税が厳しければ空洞化を図るのは当然である。
 ここで僕が敢えて問題にしたいのは、相続税についてである。更に具体的に言えば、不動産に掛かる相続税についてである。相続税基礎控除を下げる、などの議論は勝手にやって貰えば良い。しかし、何時も不公平感に苛まれるのが不動産に対する課税である。土地は、都会では非常に単価が高い。実勢と路線価には未だ相当の乖離があるとは言え、東京などでの路線価は個人レベルで見ると非常に高価である。それを居宅として相続する際に、問答無用で路線価で課税されてしまうと、特に他に動産での財産相続がない場合には、一般の庶民には相続税が払えなくなる。そして居宅の売却、郊外の高層住宅へ転居、跡地は分割されて分譲か集合住宅へ建て替え、というお決まりの結末となる。一見都会の住人の宿命の様であるが、これは実は大変な不公平だと思うのである。そして都内から、大きな樹木の残った庭付きの家が次々と姿を消して行くのも、如何とも淋しい物である。
 僕は不動産の相続については、自らが居住する限りは、原則は全国一律の、安価な名目課税価格に基づく課税にすべきであると思っている。地方に居宅を相続する人は何百坪もの邸宅を比較的安価に、場合によっては相続税基礎控除内で相続できる。ところが例えば東京では、相続人の人数と場所によるとは言え、40坪も土地があればかなりの確率で課税対象になってしまう。これが都会の住人の住環境の劣悪化を招き、個人住宅の跡地は大金持ちの瀟洒な邸宅か、集合住宅か、マッチ箱の様な分譲住宅になってしまう原因である。だから、都会の土地家屋も、第三者へ売却する事無く相続人が住み続ける限りは、地方と同程度の課税に収めて相続し易くし、そのまま住み続けられるようにしたら良いと思うのである。勿論、個人の居宅として使用しなくなった場合、或いは売却して換金した場合などは相続時に遡って課税されなければならないし、相続後の斯かる事態を想定した課税基準などの諸条件は相続時に取決めておく必要がある。
 最近は金融機関も個人向けには不動産担保での融資は普通はしなくなっていると聞くので、僕の言う居宅専用の課税評価で相続できたとしたも、現実にはそれ程の不公平は生じないと思われる。それでも不公平が生じるようなら、またより公平な制度に直せば良い。とにかく相続人には換金する積りはなく、親の代からと同様に営々と住み続けたいだけの住人から、否応なく住居を取り上げる事につながりかねない現行制度は一見公平な様でいて、大変不公平な制度であると思う。是非税制調査会でも特例を検討して欲しいと願う。