baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア雑話(2)

 ジャカルタ特別州や西ジャワ州の一部では最低賃金が今年は50%近くも上がった事は以前にも書いたが、一定の基準に満たない業績の悪い企業ではこの最低賃金の適用が免除される事になり、これに抗議する労働組合のデモが頻繁に起きている。いきなり40数パーセントの賃金アップは当然の事ながら企業や業種によっては吸収不可能で、会社が倒産してしまう。倒産してしまえば元も子もないから適用除外などと言う例外規定が出来るのだが、元々は大統領を初めとする政治家のポピュリズムに起因する最低賃金の大盤振る舞いであった。日本でもばら撒きを公約にして地滑り的な大勝を果たした民主党のその後の惨憺たる政権運営を見るにつけ、ポピュリズムはロクな結果にならない事は明白なのだが、イタリアの総選挙を見てもやはり大衆は目先の大盤振る舞いには抗えないもののようである。インドネシアでは政治家の人気取りの最低賃金アップが一部では上述の様に既に馬脚を現したが、総体的には折角の外資の投資意欲を削ぐ結果になっている。
 とは言え全般としては、相変わらず投資先としてのインドネシアの人気は絶好調である。日本に限っても、最近の人件費の急騰などでやっと一国集中のリスクに目覚めた日本企業のChina+1の流れに、尖閣諸島問題に端を発する日中関係の冷え込みが拍車を掛けている。僕に言わせれば遅すぎた目覚めではあるが、中国と共倒れするよりは増しである。ユニクロが大型1号店をジャカルタに出店する事を決め、今度はイオンが、色々黒い噂のある当地財閥と合弁でジャカルタの衛星都市に大型店を出店すると発表した。セブン・イレブンはジャカルタ市内では、東京程ではないにせよ何処にでもあるコンビニになりつつある。元々富士フィルムディストリビューターと提携しており、富士フィルムのフォト・イマージュの店舗をそのまま流用できるので店舗数の拡大には有利な提携先である。更にファミリー・マートとローソンがこれを追いかける展開となっている。地元資本のインド・マートも店舗数が急激に拡大している。
 僕はジャカルタに来てまでコンビニには用がないので当地のセブン・イレブンには二、三度しか入った事はないが、日本のセブン・イレブンと一目で違うのは、店内に富士フィルムフォトショップが必ずある事と、店内でスナックが食べられるコーナーがある事である。狭いながらもマクドナルドの店内の様なコーナーがあり、若者が店内で買ったランチなどを腰かけて食べている。日本では店の外で立ち食いしたり都内では歩き食いをしたりしていて、僕の様な年配の人間には犬畜生の様な歩き食いを見るのは耐えられないだけに、店内に食べられるコーナーがあるのは中々洒落ている。
 スハルト政権倒壊後に軍の力を削ぐために1999年、グス・ドゥール政権の時だったと思うが、軍と警察が分離された。それまでは警察も軍の組織に編入されており、警察官の階級は今でも軍と同じ呼称を使っている。ところが分離した後は両者の仲が悪く、この10年以上は各地でしばしば衝突を繰り返している。その背景には裏の商売の権益争いがあるのであろうが、勿論そんな話は何処からも出て来ない。表向きはお互いに相手の待遇を妬んで仲が悪い事になっているが、犬猿の仲であることは間違いない。
 一昨日も南スマトラのバトゥラジャという州都で、約90名の軍人が地元の警察署を着剣した銃を持って襲撃し、警察官6人が銃剣で刺されて重傷を負い、一人は重体となる事件が起きた。その上警察署と署内にあった車両は焼かれてしまった。この事件は二ヶ月前に同じ地域で起きた、オートバイで交通違反をした軍人が追跡した交通警官に射殺された事件への報復と言われている。今回の南スマトラの事件では今の処死者が出ていない様なので未だ増しだが、双方から死者が出る事も珍しくない。こんな、日本では考えられない事件が起きている。