baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア雑話(3)

 インドネシアでは火山が2つ、活動が活発になっている。一つは中部ジャワのメラピ山で、この山はしばしば噴火するし何時も噴煙を上げている山なのであまり珍しい話題ではない。昨年の10月辺りからまた活動が活発になっていて、何時噴火してもおかしくないらしい。中部ジャワに泊まる時は、朝外にでるといやでもこの山が目に入り、頂上からはいつも水蒸気があがっていて雲になっている山である。もう一つの山はバンドン近郊のタンクバン・プラフと言う標高2084mの山で、こちらは普段は大人しい山である。頂上がカルデラになっていて、深いオパール色の小さな池がある観光地である。頂上から少し下った所では熱湯が湧き出ていて、近くの掘立小屋で卵を買って捕虫網に入れてお湯に浸けておくと10分程で温泉玉子が出来る。この山の活動が数日前から活発になり、立ち入り禁止になったそうである。日本では相当天気が荒れているようで、今日は東京の練馬で28.8℃と3月としては明治以来初の真夏日になり、しかも明日の朝は4℃まで下がるというのも、インドネシアの大人しかった火山が急に活動を始めるのも、何か関係があるのかも知れない。
 「ブンガワン・ソロ」と言う歌がある。僕は子供の時に学校の音楽で習ったのだが、中部ジャワのソロにある大きな河を歌った哀愁を帯びた歌である。20年程前に、悪天候でソロ空港に着陸出来なかったガルーダ・インドネシア航空ボーイング737が、着陸を諦めてジャカルタに引き返そうとしたが機体に不具合が発生し、夜の真っ暗な中で奇跡の不時着水をした河でもある。数年前にハドソン川に、しかも昼間に着水したアメリカ人のパイロットは世界中で話題となりヒーローになったが、インドネシアのこのパイロットは世間に知られる事のなかったヒーローである。JALパイロットに言わせると、本当に奇跡の不時着水としか言い様のない芸当であったらしい。そんなブンガワン・ソロ河も、乾期に行けば殆ど水のない河で、蛇行したせせらぎで農夫が水牛を洗っている様な河である。どうして急にそんな事を思い出したかと言うと、この歌を作詞、作曲したグサン・マルトハルトノが亡くなって1000日忌という新聞記事を見たからである。これ程有名になり、インドネシアでも知らぬ人のない名曲を作曲したグサンも、晩年まで報われる事無く貧乏をしていたのである。亡くなる数年前にやっと国から何がしかの顕彰をされた時には、本当に貧しい、普通の田舎の老人であった。