baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 香港の中国化

 香港での仕事は午前中に終わり、予定通り今日中に帰れそうである。今は香港空港のラウンジにいる。
 今日は時間に余裕があるので、ホテルから香港駅までは無料のシャトルバスを使ってみた。ホテルの前で待つ事十数分、そろそろ辛抱が切れかけた頃にバスがやって来た。客は僕一人。運転手は酷く愛想が悪い。そのうちに運転手の携帯に電話が掛かって来た。どうするかと思っていたら、当然の様に電話を受けて話し始めた。少し離れていたので話の様子までは分からなかったが、暫く話は続いていた。吃驚したのは、運転手の言葉がベトナム語ではないかと思われた事である。僕は中国語もベトナム語も出来ないから確信はないが、少なくともマンダリンでも広東語でもないと思う。と言う事は、今は香港にもひょっとするとベトナムから出稼ぎが来ている事になる。彼がベトナム人でなくとも、中国の田舎からの出稼ぎであろう。そう言えば風態も決して垢ぬけた香港人スタイルではなかった。昔はメード以外は、出稼ぎは目にしなかった。
 バスから道路を見ていたが、車の運転も昔とは違って随分アジア風になった気がする。昔はアジアでは香港とシンガポールだけはマナーが良かったと記憶するのだが、今日の香港のドライヴィング・マナーはかなりアジア風に、我先ドライヴィングになっていた。こんな処にも英国統治の風習が抜けてしまったのが見て取れる。恐らくは一時が万事、一部の香港人が英国時代を懐かしむのも何となく理解出来る気がした。
 それにしても香港の飛行場は大きい。税関を抜けるとこれでもか、これでもか、とばかりに店が並んでおり、通路が縦横無尽に走っている事もあって何処を如何歩いているのか訳が分からなくなる。そもそもエアーポート・エクスプレスの駅から、直結している飛行場の方を見渡すと、柱のない広大なスペースが延々と続いているのである。八重洲の地下街が幾つも一緒になった様な広さで、圧倒されてしまう。更に昔と顕著に違うのは、税関吏に金髪が一人もいなくなった事である。勿論街中の警官にも金髪は見当たらない。当然と言えば当然だが、英国人は公職から離れたのであろう。
 久しぶりの香港で再認識したのは、香港の中国化が確実に進んでいる事、街も以前の様な規律が薄れ、徐々に中国化していると言う事である。僕は中国人の利己主義と、特に今の中国の覇権主義は大嫌いであるから、旧き良き香港が失われ、徐々に中国化して行くのを目の当たりにするのは如何にも寂しいと感じてしまう。