baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 久しぶりの香港

 香港は久しぶりである。昨年も一度来ているが、その時は急な出張でソウルに遊びに行った帰りの羽田から直接成田に移動して、そのまま香港に来たのでホテルにチェックインしたのはもう夜中、しかも翌日の仕事の段取りが事前に聞いていたのとはまるで懸け離れていてそのまま翌朝未明まで大騒ぎだったので、結局一泊二日の香港出張中に香港では何も口に出来ないと言う酷い出張であった。それに懲りた今回は、東京を朝発ったので同じ一泊二日でも少し余裕がある。
 と言ってもチェックインしたのは香港時間の3時過ぎ、部屋に入って荷物を少し整理したら大相撲が佳境に入る時間になってしまった。と、すっかり無精になった僕が外に出たのはNHKニュースも終わった6時半過ぎである。昔香港にしょっちゅう来ていたのはもう30年も前の事なのだが、未だに街の雑踏と無秩序は昔のままである。ただ気のせいか英語が以前より通じなくなっている様な気がする。中国から流入している人が多いからか、あるいは統治者が英国から中国に変わり、教育カリキュラムが変わったものか。ひょっとすると当時は僕も片言の中国語を使ったりしていたから、僕の印象が間違っているのかも知れない。そう言えば人間の脳とは面白いもので、夜一人で食事をした後にウェイトレスにお勘定を頼むのに、無意識に「マイタン」と言って自分でも驚いた。そんな言葉は自分でもすっかり忘れていたのである。
 それにしても香港の飛行場は大きい。シンガポールも同じなのだが、国土が狭いのにどうしてこうも大きな飛行場を作るのかと驚かされる。香港の飛行場から市外へは鉄道を使った。僕のホテルは香港サイドにあるから終点の香港まで乗るのだが、途中に青衣と九竜の二駅しかない。そして社内ではLEDのライトで大体今どの辺りを走っているかが表示されるシステムとなっている。ところが、このシステムが面白い。日本では絶対に考えられない、技術の進化と人間的な大雑把さが混在した、如何にも中国風なシステムなのである。
 鉄道の駅は端から端までで5駅、即ち国際展示場−空港−青衣...と続く。そしてその駅間の距離を反映した間隔で駅名が表示され、その駅の間を小さな青いLEDライトが繋いでいて、ライトが何処まで点灯しているかで凡その現在地が分かる仕組みである。面白いのは、先ずLEDライトの明るさが均一ではない事。次に、電車が走った距離に従ってLEDライトが点灯して行くのだが、それが一度に3ヶづつ点灯すること。最後は、一番距離の長い空港と青衣間にあるLEDライトの数が44ヶと、三で割り切れない数である事。ライトの明るさが均一でないのは、恐らくはライトの取りつけが雑なのか、或いはプラスチック・レンズの形状が一定ではないからだと想像する。要するに仕事が雑なのである。ライトが3ヶづつ一度に点滅するのは、単なる手抜きであろう。車両のコストに比べればそんな事に掛かる費用など知れている。そして、どうせ3ヶづつ点灯させるのなら、せめて3で割り切れる数にすれば良い物を、割り切れない数字にするから見ている方も何だか割り切れない心持にさせられる。最後の最後で走行時間とライトの数が整合しない。日本ならライトの明るさは均一、点灯は一つづつ、だから全部のライトの数など気にもならない筈である。このちょっとした差が見る者に安心感となるのは、やはり僕が日本人だからか。そして、そういう大雑把さを感じると、香港では今は鶏は食べたくなくなるのである。