baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ジャカルタから戻る

 今朝予定通り帰国した。断食期間中のジャカルタは、普段の交通渋滞以上の大渋滞で、もう一刻も早く帰りたくなる程であった。断食期間中は人の動きのパターンが重なってしまい、同じ時間帯に動く人が増えるので、たださえ尋常ではない交通渋滞が目も当てられなくなる。特に礼拝時間の昼ごろと、断食が明ける夕方のラッシュが甚だしい。その代わりみんなが食事をする夜は空いている。特に昨晩は8時から、ジャカルタイングランド・プレミアリーグチェルシーインドネシアナショナルチームの試合があり、みんな家に帰ってテレビに噛り付いてしまったので昨晩は市内から飛行場まではあっという間であった。
 断食期間中のインドネシアは、多少イスラム色が強くなる。例えばレストランでは大っぴらに酒を出すのを遠慮しており、先日行ったイタリア・レストランではワインはテーブルの上には置かないで欲しいと言われた。日本食レストランでも、ビールを土瓶に入れて持って来たり茶碗で飲ませたりする。以前はそんなに極端ではなく、精々断食期間中はカラオケが早仕舞いしたり、マッサージの開店が断食が明けてからの夜だけであったりする程度であったのだが、最近は以前よりもムスリムに遠慮する風潮が出て来ていている。その大きな理由の一つが、FPI、”イスラム支持者のフロント”、という名称のアナーキストが暴れている事が挙げられる。FPI幹部は如何にも敬虔なイスラム教徒の如き偉そうなお題目を並べているが、やっている事は欲求不満の若者を集めて暴力三昧をする、言ってみればチンピラの集団であり、実態は暴力が嫌なら金を払えと言う正にヤクザのみかじめ料商売なのだと思う。その泡銭に警察の下っ端も買収されている様で、最近の警察とFPIの連携が新聞に載っていた。
 このFPIのチンピラがカラオケや酒を提供したり売っている店の打ち壊しをし、警察の取り締まりが甘いので、一般の店は怖がって酒が見えない様にするのである。しかし実行犯のチンピラはただの欲求不満の若者が金で雇われているだけだから、ガソリンスタンドでガソリンを入れさせて金を払わずに逃走したり、遂には車でバイクをはねて死傷事故を起こしたりし始めた。ここまで来ると流石に警察の下っ端だけでは手に負えなくなっている。海外のイスラム国からも、インドネシアイスラムのイメージが落ちる暴力団体を野放しにしていると抗議が来たりしていて、大統領からも徹底的な取り締まりの指示が出された。これに対してFPIの頭目は、汚職にまみれ礼拝もいい加減な大統領に文句は言われたくない、と如何にもイスラム主義を標榜しているが如き反論が出ているが、所詮はヤクザの親分に宗教や政治と言う崇高な理念がある筈もなく、今は偶々反政府派から金が流れているであろう事は想像に難くない。
 今朝の成田での事。人が2-3人並んで歩けるかどうかという狭い通路を、40代半ばぐらいの、サラリーマン風の男がキャリーバッグを引いて歩いていた。ところがこの男、まるで周囲を気にせずにキャリーバッグを体から離して右に左に蛇行して歩くので、僕は2-3度キャリーバッグに当たりそうになり、思い余って「危ないなぁ」と注意した。「何が危ない?」と言い返して来たので、「右に左にフラフラ歩くから」と僕は普通に注意したつもりである。ところがその男は突然逆ギレして、反省するどころか僕をジジイと呼ばわっての悪口雑言が始まった。ぼくはバカバカしいのでそれ以上は相手にせずに無視して追い越して行ったのだが、僕を追いかけて来てしつこく大声で「ジジイ、〇〇〇〇」「ジジイ、〇〇〇〇」と怒鳴り続ける。僕は自動化ゲートから出るのでそちらに行ったら、その男も後ろに付いて来て未だ怒鳴っている。何故そんなに怒るのか全く理解出来なかったが、朝から不愉快ではあった。
 思うに彼は子供の時分から、親にも注意という事をされた経験がないのであろう。人に注意されたことがないのに、増してや他人に注意されたのでいたくプライドが傷付いたのであろうが、自分の傍迷惑を棚に上げて、公衆の面前で何時までも大声で怒鳴り続ける、極く普通のサラリーマン風の人間がいる事に本当に驚いた。世間には僕の理解の埒外の人間が沢山いるのかも知れない。ああいう男がつまらない事で喧嘩をして、人をホームの下まで突き飛ばしたりするのであろう。普通なら「あっ、すみません」の一言で終わる筈だったのに、下劣な人間が増えて住み難い世の中になったと思う。
 帰りのリムジンで、首都高にはいってからの事なのだが、見慣れないワンボックスの、覆面用と思われる警察車両が赤色灯を回転させながら走って来た。初めて見る種類の車だったので注目していたら、その後ろからパトカーに警備された囚人護送車が走って来た。二車線の首都高で、パトカーが追い越し車線側からぴったり護送車に付いて走っている。2-3台後からもう1台護送車がやってきた。珍しい光景もあるものと思って見ていたら、さらにその後ろから白バイが2台、これも赤色灯を回転させながら伴奏して来た。霞ヶ関に裁判所が色々あるから囚人護送車を首都高で見るのは珍しくないけれど、こんなに物々しい護衛が付いているのは初めて見た。オーム真理教の死刑囚とか、ヤクザの大物が乗っていたのであろうか。
 今日は高速で事故があったらしく、成田から新宿までリムジンば2時間半近くも掛かってしまった。景色は見飽きているし、さすがに草臥れた。家に着いて一休みしてから、あちらこちらのサポートセンターに相談しながら、やっと出張用のパソコンが一応回復した。原因不明なので不気味ではあるが、取り敢えずは大事にならずに済みそうなのでほっとしている。