baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 急遽インドネシアへ

 先週末に、調度黒四ダムの駐車場に入る列に並んでいる処へインドネシアから電話が掛かって来た。緊急の渡航要請である。電話では詳細は話せぬと言う中で何とか最低限の要点だけは聞き齧り、早く訪問した方が良いと判断して昨日急遽ジャカルタに入った。用事は一応昼過ぎには終わり、今回は急な事で東京でも色々予定が入っているので、今晩の飛行機で日本にとんぼ返りする事にした。当地での仕事は流石に一日では少々心残りの事もあるけれど、今度ばかりは仕方がない。それに、仕事よりも身体がキツイ。現役時代であればこんな出張も日常茶飯事であったが、流石に昨今はもう少しゆったりしたペースでないと身体に堪えるようになって来た。
 インドネシアでは来年の大統領選に向けて、野党第一党のゴルカルが内輪揉めをしているようである。少し前にこのブログにも登場して酷評されたアブリザール・バクリ・ゴルカル総裁の大統領候補立候補を、取り下げさせようという動きがゴルカル内部で露骨になっているらしい。ゴルカル党員の判断力がまともであれば、当然の動きである。国民に全く人気の無いアブリザルでは勝ち目はないと思われるので、早く軌道修正をした方が良い。
 因みに元大統領スハルトの娘婿であるプラボウォも立候補を宣言しているのだが、現段階の世論調査では意外に人気があるようである。32年間独裁政治を布いて来たスハルトは、1997年5月に実質的なクーデターで権力の座から下りたのだが、その2日後に、時の軍総司令官であったウィラントと陸大同期で常にライヴァル関係にあったプラボウォがクーデター阻止の為にボゴールの近くまで兵を動かして来ていた事は殆ど知られていない。その時は、最後の最後にウィラントとのギリギリの話し合いで、プラボウォは軍を引いて新政権を受け容れたのである。
 その後のインドネシアは反スハルト熱に浮かされ、民主化運動に浮かされて、経済は停滞し、政治は混乱した。そんな不景気と政治不在や汚職の蔓延に嫌気した国民に、スハルトが再評価された事は不思議ではない。スハルトが死去する前には、スハルト待望論すら実際にあったものである。そのスハルトは何度か不正蓄財や汚職容疑で法廷に引き出されそうになったが、結局は実現しなかった。国民の間に反スハルト感情と共存していた、曰く言い難い微妙なスハルトへの敬愛心があった事と無関係ではない。
 そのスハルトの娘婿である。彼は東ティモールのゲリラ制圧の為に駐屯していた野戦軍司令官の時代に敵の捕虜となり、男性器を切断されてしまった。その事件以前に生まれていた息子は、今はパリで女装して暮らしていると聞く。結婚していたスハルトの次女とは、事件から大分経ってから離婚している。政治手腕は未知数であるが、父親は有名な経済学者であり、一時は時の政府に反抗してスラウェシに臨時政府を樹立した程の有名人であり、弟は当地で一代で財閥を成した一家である。まぁ、僕の見立てでは大統領の器ではないと思うのだが、人材不足の当地の事ゆえ、瓢箪から駒が出ないとは言い切れない。
 大統領選を占うには、今後与党の民主党と、野党第一党のゴルカルが擁立する候補が其々誰になるのかが大きなポイントであるが、先日知人が言っていたジョコウィ現ジャカルタ市長が本当に最短距離にいるのかも知れない。ジョコウィはメガワティ率いる闘争民主党に所属しているが、闘争民主党も大分弱体化して来ているから、ジョコウィがゴルカルに引き抜かれる可能性もある。残り1年を切った大統領選は、段々面白い展開を見せ始めている。