baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ウミガメの卵

 インドネシアやフィリピンなどの南国では昔からウミガメの卵を食する習慣がある。僕も25年ほど前に一度だけ食べた事があるけれど、僕にはどうしても食べたいほどの美味には思えなかったが、好きな人には堪らない珍味であるらしい。ウミガメの卵は固ゆでにしても白身は固まらず、ゲル状になっているのが特徴である。
 このウミガメの、中でもアオウミガメとタイマイの最大の産卵地と言われる東カリマンタンのサンガラキ島では、5月から9月にかけて毎晩カメが産卵の為に上陸してくる。特に8月から9月が最盛期で、毎晩40頭のカメが各100個ほどの卵を産むと言う。ところがこの卵が根こそぎ密猟で取られてしまうのだと言う。環境保護団体が活動しようとすると、サンガラキ島のみならず近隣の住民にまで妨害され、身の危険を感じた環境保護団体も今ではサンガラキ島からは殆ど撤退してしまったそうである。
 理由は値段の高騰である。勿論インドネシアでもウミガメの卵の採取や売買は禁じられているのだが、1個100円で引き取られるとなれば一部の悪徳住民にはこれ程美味しい話は無い。一晩で100個採取すれば1万円、月に10万や20万が簡単に手に入るとなれば、毎月数万円の現金収入も覚束ない現地住民にとってはこれ程美味い話は無い。
 カリマンタンのマレー系インドネシア人に言わせると、悪いのは華僑であると言う。東カリマンタンに限らずカリマンタンなら何処でも、華僑の店に行けば、店先には置いていないが何時でも裏から出してくるそうである。確かに資金を豊富に持っているのは華僑であるし、インドネシアでも華僑にはモラルよりは金儲けである人間が圧倒的に多いから、貴重なウミガメの卵を買い漁っているのが華僑であっても不思議はない。更に密猟は地元のヤクザが仕切っている可能性が高い。幾ら貧しくとも全ての地元住民が密猟に携わっているとは思い難く、一部の不良住民がヤクザに使われていると思われる。当然地元の警察も抱き込まれている。そしてヤクザに資金提供しているのも、華僑であるケースが圧倒的に多い。
 理不尽に絶滅に瀕しているウミガメの卵が密猟されている事実は明白で、且つ地元警察が何もしていないのなら、もうインドネシア政府が腰を上げるしかない。こんな話はウミガメの卵に限らず、そこら中に転がっているから政府も中々手が回らないのであろうが、アオウミガメやタイマイがいなくなってしまってからでは手遅れである。インドネシア政府の腰が上がらないのなら、日本政府を筆頭に外国から圧力を掛けなければならない。日本政府には政府援助に引っ掛けて、是非インドネシア政府にウミガメ保護を強く促して欲しい物である。ウミガメの卵を生活の糧にしている人間は、地元でも決して多くは無い筈である。インドネシア人の全てがモラルよりも金と言う訳では決してないから、地元警察の収賄を止めれば密猟防止はそれ程難しい話ではないと思う。