baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 モローとルオー

 折角大学の講義が終わっても、毎日何だか気忙しい。昨日は都心で打ち合わせがあり、夜は忘年会の約束で、間で一度家に戻るのも半端なので打ち合わせの後、暇つぶしもかねてモローとルオーという展覧会に行って来た。
 この展覧会は知り合い二名からそれぞれ、素晴らしいから是非行ってみたら良いと勧められていたものである。知り合いの一人は若い女性なのだが、彼女は特段に感銘を受けた様で、まるで神の啓示に触れたかの様な感銘の受け様だったらしい。場所は新橋からほど近い、パナソニック汐留ミュージアムである。
 昨日は最終日という事もあったのだろうが、結構な混雑であった。驚いたのは本当に絵が好きそうな年配の女性や、画学生ではないかと思わせる若い人達が、他人が観ている前を平気で横切ったり、時には絵の前に張り付いてしまい完全に視界を遮って平然としているのである。そういう見方をしたければ、人が途切れた時にすれば良い。そうすれば後から来た人は暫くは待つものである。しかし既に絵を鑑賞している人がいるのに平気でその視線を遮る神経、それも絵に造詣の深そうな人たちの無礼な立居振舞であったから吃驚した。日本の公衆道徳はもう地に堕ちている事を改めて認識させられた。
 ところで肝心の展覧会は如何であったかと言うと、残念ながら僕には決して楽しい展覧会ではなかった。先ず題材は宗教的な物が大部分で、構図も色遣いも全般に暗い。首を切り落とされたヨハネの図、だとか血まみれのゴルゴダの丘の十字架の下にへたり込むマグダラのマリアだの、何れも僕の趣味とは程遠かった。暇つぶしにはなったけれども、楽しいと言う事は少しもなかった。
 シニア特権で、入場料を100円まけて貰った。先日の六義園で50円だかをまけて貰ったのに味をしめ、昨日は二度目のシニア特権行使であった。しかし66歳での特権行使には聊か忸怩たるものがある。早く70歳になって、押しも押されもせぬシニアに脱皮したいと思っているこの頃である。
 展覧会の後、未だ時間があるので新橋のスターバックスに入った。普段はこういう店には入らないので、何だか勝手が分からない。たまたま空いていたテーブルがあったので先ずそこに荷物とコートを置いて、やおら注文に出向こうとしたら店員が飛んできて順番待ちだから別の場所に並べと言う。昨今はコーヒー屋でも行列を作るものらしい。そんな事とはつゆ知らず、大恥をかいてしまった。もっともそれからは、僕をお上りさんと見立てたらしく、その店員が何かと親切にしてくれ、最後は食器まで下げてくれた。