baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 煩雑な遺産相続

 以前このブログに登場した叔父も、来月で満96歳になる。昨夏は結局3週間入院し、退院したその足で直接介護施設に入って貰った。当人には抵抗もあったが、もう一人暮らしではこちらの神経が保たないと拝み倒した。急な入所だったので、とにかく空のある施設と言う事で、中々の物入りになった。それからも毎月の掛かりや病院通いなどで、結構な費用が飛んで行く。
 そんな中で分かったのが、既に10年以上も前に亡くなった叔母の遺産が整理されていない事であった。遺産といっても、証券会社に債権が預けてあっただけの事なのだが、叔母が一人遺された時の事を思ってか、叔母名義の債権は想像以上の高であった。この遺産を取り崩せば当面の出費も或る程度は賄えると、早速に遺産相続の手続きを始めた。
 ところが、実子がいない夫婦の相続は、聞きしに勝る煩雑な手続きが必要であった。遺言があったならこんな事にはならないのだが、遺言がないから今更どうにもならない。決められた手順に従うしかない。叔父には配偶者としての遺留分は勿論あるのだが、血族の遺留分は父母、祖父母、兄弟、甥姪にまで及ぶ。そして婚姻外子がいないかの確認で、祖父母を初め血族全員の生まれた時から死亡した時までの戸籍を集めなければならない。叔母の祖父母が生まれた時と言えばもう明治も20年代の戸籍であるから、今とは違って家の概念も異なれば戸主の権威も違う。一つの戸籍に一族郎党が並んでいて、しかも嫁が入ったり出たり、子供がコロコロ生まれるかと思えば早逝したりと、なんとも大家族の複雑な戸籍になっていて、しかも達筆な毛筆書きであるから最早素人には理解不能である。当時は男は結婚しても、親の戸籍に残ったままなのが普通であったらしい。しかも戸籍は辿れば各地に飛んでいる。そしてその地が、現在はどこの市町村に属しているかすらも、旧い戸籍になると県庁に紹介しても俄かには分からない。
 その上戸籍の改正が平成16年ごろから始まって、あらゆる戸籍がこの時期に新しくなっている。その為に、この時期に重なる戸籍は必ず二通取らないとならないのである。そんなこんなで、今日までに集めた戸籍は既に12通、これでも未だ2〜3通足りない。足りない事が、戸籍を取り寄せて初めて分かる事も多いので、戸籍集めに費やされる時間と手間暇は膨大なものである。
 そして、父母、祖父母、兄弟が既に何れも死亡している事が判明したので、叔母の甥、姪に遺留分放棄を頼んだ。こちらは物入りではあるし、先方からすれば当てにした事も無い、正に天から降って湧いた遺産であるから、僕は当然放棄してくれるものと思い込んでいた。ところがいざ話を始めれば然にありなん、金額を確かめられ、従兄弟同士で談合すると言う。要するに貰える物は貰おうと言う事らしい。まだ明確な回答はないので確定ではないが、口ぶりからはそんな雰囲気である。叔父には既に耳に入れ、覚悟はして貰っているが叔父にも意外であったらしい。元はと言えば叔父がズボラだったのが原因なので、自業自得なのだが、聊か気の毒ではある。
 それにしても、実子がいない者は遺言を書いておかないと、残されたものは酷い目に遭う事を、身に沁みて感じたものである。