baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

大統領選 IV

 日曜日からまたインドネシアに来ている。ここのところ週替わりで日本とインドネシアを往復している。ホテルにチェックインし、部屋に上がって何気なくテレビを付けたら、調度プラボウォの勝利宣言がニュースで流れていた。9日の選挙当日にジョコウィとプラボウォの両者が揃って勝利宣言をしたのだが、13日のプラボウォの勝利宣言は二度目のダメ押しの宣言である。
 プラボウォはスハルトの女婿であり、弟は一コングロマリットの総帥である。更に、色々と脛に傷のある経済調整相のバクリーが必死に支援している。そんなこんなで資金には事欠かない。そのプラボウォがダメ押し勝利宣言をするものだから、投票所の買収に目処が立って本当に勝てる目算が出来たのかと思う反面、選挙結果で負けた時に投票の集計で不正があったとクレームする下準備なのかとも思われる。それほどの大接戦である。
 昨日乗ったタクシーの運転手は、出身がジョクジャ、ジョコウィの出身地に近いこともあり熱烈なジョコウィ派である。僕が乗っていた40分間、プラボウォの悪口を言い募っていた。ジョコウィにはこういう類いの庶民の支持者が多いので、万が一にもプラボウォが正式に勝利する様な事があると、大騒乱が起きる懸念が大いにある。実際、僅差であれジョコウィの勝利はほぼ間違いないと言うのが大方の見方である。だからプラボウォが勝利すれば、誰の目にも金に物を言わせたと映る。
 当初の僕の危惧に反して、経済界は意外にもジョコウィ支持派が優勢らしい。一層の改革への期待、そしてもううんざり、飽き飽きの政府の汚職体質への批判の様である。懸念される軍の支持は、ウィラント元国軍総司令官や、パンジャイタン退役中将、元工業大臣、などの強力な支持を取り付け、退役中将のプラボウォにも引けを取らないと思われる。そして、裏で相当程度国を操っている情報部は既に昨秋からジョコウィに大統領をやらせる事で纏まっている。今日も情報部の幹部に、22日に騒乱が起きる事はないか訊いたが、大統領は既にジョコウィで決まっているからプラボウォが如何足掻こうと騒乱の危険はないと断言された。
 1998年以来急速に民主化を進め、汚職を別にすればアセアンの優等生になりつつあるインドネシアなのだから、今回の大統領選でも誰に後ろ指を指されるでもない民主的、且つ静穏の中で新大統領が選出される事を祈念するのみである。