baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 インドネシア大統領選 V

インドネシアの大統領選の不正報道が続いている。有権者が400人の選挙区で投票用紙が800枚も出てきたとか、1700票の投票用紙に只の1枚もジョコウィ票がなく、しかも選挙管理委員5人の署名が全て同じ手で書かれているのが一目瞭然だとかのお粗末な話である。
 しかも、以前も書いた様にインドネシアのメディアには旗幟鮮明に何れかの陣営に属している会社も多く、そういう処はムード作りの為にいい加減な報道を平気で流すから、開票速報など全く当てにならない。出口調査がこれまたいい加減で、公明公平な調査ではない。ついに数日前には、世論調査の業界団体から、開票速報をしている企業の中で悪質な二社が除名処分にされた。二社とも常にプラボウォがリードしているという調査結果を公表していた会社である。何れも数字の根拠を開示しなかった為、国民の不信を招くという理由で除名された。
 そんな具合だから何があっても不思議ではないのだが、一昨日、不正が発覚した選挙区の一部で再投票が行われた。僕が見た実況ニュースは、有権者よりも投票用紙が多く、プラボウォが圧勝していた選挙区での再投票の様子であった。選挙の趨勢が分かってからの再投票というのも如何かとは思うが、最初の投票が明らかに無効なのだから仕方がない。他にこれといった名案もないのだろう。結果は10%ぐらいの差でジョコウィが勝利することとなった。流石に今回はメディアの目もあり、前回の様ないい加減は出来なかったものと見える。
 それでも、こうして不正が次々に明るみに出て、それを是正しようという動きがあるだけ、本当にインドネシアは増しになったと思う。今でも発展途上国の選挙では常に選挙結果の捏造や票の集計に際しての不正が問題になる。実際、到る処で不正が罷り通っていると思う。そしてそれは、往々にして庶民の意志とは懸け離れた、権力の強い人間の恣意に左右されてしまう。インドネシアの今回の大統領選挙でも、圧倒的な資金力を誇るプラボウォが何をしているかは分かったものではないが、それでも例え氷山の一角とは言えこうして不正を表沙汰にして是正しようとする動きがある事は、インドネシア民主化が着実に進んでいる証拠と言える。日本を初め先進国の国民の目からは、前出の様なお粗末な選挙違反が実際に行われている事自体が信じ難かろうが、僕は今回の選挙違反是正報道に接して、インドネシア民主化に隔世の進歩を感じるのである。
 選挙結果は7月22日に公表される予定だが、どちらが勝利しても敗者が投票と集計の不正を憲法裁判所に訴えるのはまず間違いない。従い憲法裁判所の判決が出る8月末までは、新大統領の選出はお預けとなるであろう。しかし明日の段階で、ジョコウィが勝っていれば恐らく騒乱は起こるまいが、誰の目にも劣勢のプラボウォが勝つと極めて不穏な事態になりかねない。インドネシア民主化の発展の為にも、政府や治安部隊には抜かりなく世論の誘導と治安維持に努めて欲しい物である。