喫緊の自動車の安全対策

　車がどんどん自動運転に近付いていると言う。行く先をインプットすればGTPで道路を選択し、車線を読み取り、前の車との車間を測り、飛び出しがあっても急ブレーキが掛かる、等々の技術が急速に進んでいて、ドライバーは何もしなくても目的地に着ける日の来るのが既に目前に迫っているらしい。もっとも、それらの自動装置が万が一故障して事故が起きた時には、今のルールではドライバーの責任になるそうである。そんな何もしなくても良い自動車に乗っていれば、幾ら運転席に座っていても居眠り位しかする事がないから、突然の事故で目が覚めて、何も分からぬままに責任を問われても定めし困る事であろう。但し、そんなつまらない車は僕なら絶対に買わない。そんな車に乗るしかないほど老いぼれたら、僕はタクシーを呼ぶか公共交通機関を使う。
　しかし、そういう車が実用化されたら、路線バス、長距離バス、長距離トラック、タクシーなどは何れは無人化されるのであろう。高速道路での長距離バスやトラックの事故が後を絶たず、更には運転手不足が問題となっている昨今、確かに無人バスやトラックは運転手が運転する車よりは安全な乗り物になるのであろう。運転手がいない乗り物には初めは違和感があるかも知れない。実際、無人運行の「ゆりかもめ」には初めは何だか落ち着かなかったし、線路際に信号や標識が全く無い事に慣れるのには少し時間が掛かった。それでも一旦慣れてしまえば当たり前に、何の感慨もなく乗るようになるのだから、無人のバスやトラックにも直ぐに慣れるのであろう。
　しかし、僕はそんな車の開発よりも先ずは目先の急務として、運転手が正常でない場合には動かない車を作って欲しいと思う。と言うか、全ての車にそういう安全装置を付けるべきだと思う。車側だけで対処できるその程度の技術はもう完成している筈である。呼気からアルコールを検出したらエンジンが掛からない、危険ドラッグなどで酩酊したら瞳孔の異常な動きや異常なハンドル操作、ペダル操作を検知して緊急停車する、同様に逆走や暴走を始めたら緊急停車をする、居眠りなどで蛇行を始めたり車線を守れなくなったら緊急停車する、前に障害物があるのにアクセルを踏んだらエンジンが止まる、等々の安全装置を付ける事を車メーカーに義務付けたら良いと思う。車の単価は大分上がるであろうが、車を運転する者の責任と思えば文句は言えまい。ついでに危険の程度に応じて、悪質な場合には自動的に警察に通報するシステムを付けたら良い。
　一時は減った飲酒運転による人身事故がまたぞろ増え始め、信じがたい話だが、危険ドラッグ吸引による暴走で人が亡くなる事故が相次ぐ昨今である。こんな理不尽な事故を野放しにしておいて良い道理はない。技術は既にあるのだから、これからの車は酔っ払いやドラッグで酩酊している人間、居眠りや耄碌でまともな運転が出来ないドライバーがハンドルを握っても動かない車にして欲しい。自動運転は車のみならず道路側にも種々のインフラ工事が必要で実用化には未だ大分時間が掛かろうが、危険運転防止装置は車側だけで対応出来るのだから、やる気になれば明日にも出来る筈である。車は誰にでも運転出来、且つ常に凶器になり得るのだから、大部分のドライバーには無駄になろうけれども、こういう安全対策は速やかに制度化すべきである。