baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

ジョコウィ

ジョコウィが大統領に就任して一月半が過ぎた。日本を出る前に新聞で読んだ、シンガポールへ行くのにガルーダのエコノミーを使った、などと言うトピックに流石のジョコウィも国政レベルでは中々思う様に振る舞えないのかと言う危惧を感じたりもしたが、当地に入るとそろそろジョコウィらしい話題が聞かれる様になっていた。その中からたまたま僕の耳に入ったトピックスを幾つか紹介する。
インドネシア島嶼国なので広大な海に囲まれている。ここに昔から外国の漁船が入り込み違法操業をしていて、仮に捕まっても官憲に少額の金を掴ませて見逃して貰うのが常であった。これらの外国漁船は何れも300トンを超える大型船で、大掛かりに魚を捕獲するので地元の漁師は不漁に喘いでいた。そこへジョコウィの登場である。その結果今は、不法操業の外国漁船は断固拿捕し、乗組員を拘束した後船を爆破して沈めてしまうようになった。海洋国家インドネシアを謳うジョコウィの面目躍如である。
昨日も中国、韓国、タイの漁船15隻が拿捕され、何れも爆沈される事になった。やり過ぎではないかと言う声もあるが、ジョコウィは他人の家に忍び込んで来て庭の池の魚を盗む泥棒相手にやり過ぎと言う事はないと少しも動じない。国際法上は正しいのかどうか分からないが、違法操業の外国船に貴重な珊瑚礁をボロボロにされても一向に実力行使をしなかった何処かの国の政府に少しは見習って欲しい。
死刑判決が確定しているスマトラの麻薬シンジケートのボスが、金に物を言わせて減刑嘆願をし、その声がジョコウィにまで届いた。切っ掛けはバリ島で麻薬所持で逮捕され死刑が確定したオーストラリア人に対する減刑だか恩赦だかのオーストラリア政府の要請を、ユドヨノ前大統領が受け容れた事にあるらしい。これに対しジョコウィは単純明快、法に則って死刑が確定したのなら法に則って死刑を執行するのが当然である、と取り付く島もない。当地では未だ人命が安く死刑に対する異論が余り聞かれない上に、日頃、金持ちの悪漢が金にあかせてやりたい放題と言う実態に飽き飽きしている庶民は拍手喝采である。事実、このボスは獄内からも自分のシンジケートを掌握して麻薬の密売を続けているそうであるから、獄吏が買収されている事、全く悔悛の情がない事は明白である。他方で、地方官吏の汚職糾弾のデモをして投獄されている市民活動家や、農民の権利を訴えて投獄された人権活動家などは恩赦で減刑され釈放された。こちらの話は僕には背景の知識がないので良く分からないが、メディアの論調は概ね好意的である。とはいえ流石にその極端な落差は議論を呼んでいる。
汚職撲滅委員会にもドライブが掛かっている。当地は警察や検察にも汚職が蔓延しているので、ユドヨノの時に独自の捜査権や逮捕権を持つ汚職撲滅委員会が作られた。この汚職撲滅委員会でも汚職事件が発生し話題を撒いたこともあるが、とにかく今でも強権を振るっている。昨日は地方の知事を含む99人の官吏が逮捕、又は身柄拘束されたそうである。脛に傷のある役人は戦々恐々であろう。地方行政が止まってしまう畏れもあるが、膿を出すには避けて通れない。ジャカルタ特別州でも、ジョコウィ時代の副知事であったアホックが、華人である事やカトリックであることを理由にプラボウォ陣営に随分攻撃されたが何とか凌ぎ切って無事に知事を襲ったのだが、従来の路線を踏襲して徹底して汚職を排除しようとしている。その結果、些細な事ではあるが道路や歩道橋の修復や架設があっという間に為される様になったと好評である。アホックは、無駄を省けば予算は十分にあると説明している。実態は、官吏が私腹を肥やす事を諦めれば、予算が回る上に物事は迅速に動くと言う事であろう。
ジョコウィもアホックも、ポピュリズムに走っている懸念は拭えぬが、金さえあれば何でもありの当地では誰もが金持ちのやりたい放題に辟易しているので、物事に筋を通し、徹底的に汚職を追放しようとする姿勢は今のところ大方の支持を得ている様である。