baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

インドネシアの旧正月

日曜日から、今年始めてのインドネシアに来ている。インドネシアでも、当たり前だが今日が旧正月である。もともとマレー系インドネシア人には旧正月を祝う習慣はないし、インド系、アラブ系も同様だから、インドネシア旧正月を祝うのは中国系インドネシア人だけである。その中国系も1960年代末のスハルト共産党弾圧に伴う中国人虐殺以降、中国人学校の廃止、中国語新聞の廃刊、中国語教育の禁止、公共の場での漢字使用禁止、などの弾圧で中国伝統の文化は目立たない様に仕舞い込まれていた。その抑圧を一気に開放したのが盲目の大統領、グスドゥールであった。グスドゥールは任期途中で弾劾されたりして余り評価されていないが、現在のインドネシア民主化の成功は偏にグスドゥールの先進的な改革の賜物だと僕は感じている。
それはさておき、そんな経緯もあり昔のインドネシアでは旧正月は、中華系インドネシア人だけがひっそりと自宅で、大晦日と元日を家族で祝うだけで、公式な行事は一切なかった。家族が外のレストランに集まる事すらも憚られた。それがグスドゥール以降少しづつ変わり始めたとはいえ、所詮はインドネシア旧正月と高を括って、今週に予定を組んでこちらに来たのである。それがなんと、旧正月が祭日になってしまっていた。多忙を遣り繰りしてやって来たのに、大晦日の昨日午後と今日は全く仕事にならない。実は仕事のパートナーであるこちらの華僑ですら、今年は旧正月が休日である事を忘れていたぐらいだから、僕が特別時代遅れと言う訳でもなさそうである。何れにしても大誤算であった。
変わったのは休日が増えただけではない。僕が宿泊しているホテルでは、ここ数日はロビーに流れる音楽が中国の音楽ばかりである。ロビーには赤い提灯が無数に吊られ、新年を迎える準備に余念がない。街のレストランでは、椅子に白いカバーを掛け、そこに大きな赤いリボンを結んで新年ムードを演出している。大きなモールの通路には天井から Gong Xi Fa Chai 、即ち恭賀新年と書かれた幕が垂れている。Gong Xiang Fa Chai はショーウィンドーや広告塔など、街の其処彼処で目に付く。こうして今や公然と中国系インドネシア人の伝統文化が受け入れられている。そしてマレー系インドネシア人もそれに便乗して、商売に余念がない。生憎今日は昼前から大雨で、ジャカルタの北にある中国人街の催しは少し人出が少なかろうが、今やインドネシア旧正月は誰憚る事のない一大行事に格上げされた様である。
スハルトが倒れ、民主化路線がヨチヨチ歩きを始めた頃のインドネシアは、訳が分からぬままに突然自由に物が言える様になった大衆の、無茶苦茶で一方的な要求が匹も切らぬのを目の当たりにして、新興国にはある程度の強権支配は必要悪である、徒らに民主化を急げば混乱しか招かない、と思った事もあるがそれから15年、インドネシア民主化大過なく、且つ着実に進化している事を実感する久し振りのジャカルタ旧正月である。