baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

ジョコウィ大統領

インドネシアに来てみれば、大統領は変われども連日の新聞やテレビを賑わすニュースは相も変わらず汚職である。今回は例のKPK、汚職撲滅委員会と警察の鎬を削る争いのニュースが連日喧しい。
全ての経緯は流石に当地に来たばかりでは追いきれないが、簡単に言えば、ジョコウィが大統領選挙に立候補した際に後押ししたメガワティ元大統領が率いる闘争民主党が推す次期警察庁長官候補に汚職疑惑があるとKPKが捜査を開始した事が争いの発端である。その候補者は、名をブディ・グナワンと言う(以後BDと略す)、元メガワティ大統領の副官であった。その彼の家族名義の口座に途方もない金額の預金があることが発覚し、KPKは汚職容疑をかけた。常識的に国家公務員の給与とは桁違いに高額な預金であるため、誰の目にもまともな金で無い事は明らかである。これに対しBDは外国銀行からの借り入れであるとの苦しい言い訳をしながら、逆にKPKを越権行為で地裁に告訴し、数日前に地裁でBDの勝訴判決が下ってしまった。当地の裁判など金次第だから、こんな勝訴をまともに信じる人間など一人もおるまいが、司法判断は司法判断である。この判決を受けて勢いを付けた闘争民主党は、ジョコウィに対してBDの長官就任を督促し、国民は明らかに汚職疑惑のプンプンする警察官の長官就任には大反対である。当然の事ながら、クリーンで汚職撲滅を売り物に大統領に就任したジョコウィの決断に注目が集まった。
これに対し、当初はジョコウィも煮え切らなかったらしいが、昨日敢然とBDの長官就任を覆し、全く別の人事を発表した。この人物の就任には身辺調査や国会承認が必要なので未だ紆余曲折が予想されるが、取り敢えずジョコウィは権力者の意向よりも大衆の意向に組みした、或いは常識的に反汚職の筋を通したものである。この一件を見る限りは、ジョコウィは随分と骨のある、下馬評通りの男に見える。
しかし現実はどうなって行くか、実は未だ予断は許されまい。先ずは何事も綺麗事では動かない政治の世界である。日本でも直近では渡辺喜美小渕優子などの例に見られる様に、政治家と不透明な金は何処の国でも何時の時代でも、切っても切れない関係にある。幾らクリーンで売っているジョコウィでも、大統領になる為には何らかの借りや約束事はある筈である。次に、もし本当にジョコウィが警察を敵に回してしまうとなると、元々軍の後ろ盾がないから全くの丸腰の極めて覚束ない政権になってしまう。ジョコウィには何とも気の毒だが就任早々、早速腕力と言行が試されている。