baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

インドネシア近況

今週はバンドンにいた。バンドンはインドネシア初代大統領のスカルノが、第二次世界大戦後の1955年に戦後台頭した新興国を糾合して第一回アジア・アフリカ会議を開催した地である。周恩来ネルーなどの、戦後の大物政治家が一同に会した、新たな世界の幕開けを象徴する会議であった。別名バンドン会議とも呼ばれるアジア・アフリカ会議も今年で70周年を迎え、70年を祝す会議がジャカルタで開かれ、安倍晋三も出席した。
そんな歴史のあるバンドンだから、バンドンと言う名前は聞いた事がある人も多いと思う。場所はジャカルタの南180kmにあり、周囲を山に囲まれた標高700m程の盆地である。昔はオランダ人の避暑地であったと言う。実際、大変に涼しい。今でこそ道路に溢れかえる車とアスファルトや高層ビルからの照り返しで、以前程は涼しくなくなったが、それでも日陰に入れば真昼間でも爽やかだし、朝晩は薄着だと肌寒い程である。今でも窓を開けておけば昼間でもエアコンは殆ど要らない。こんな、今の東京から見れば天国の様な処に4日もいられたのは幸であったが、そんな日々も今日で終わり車で4時間以上も掛けて、昼過ぎにジャカルタに戻って来た。そして今夜の夜行便で帰国する迄の束の間に、ジャカルタのホテルで一休みしている次第である。
当地で見聞きする限り、どうも大統領のジョコウィの評判が急落しているらしい。実行力がない、メガワティの言いなりである、中国に接近しすぎである、等々の批判を耳にする。民衆は景気が上向かない上に物価上昇で悲鳴を上げている。反ジョコウィデモも頻発しているらしいが、当地のデモは皆日当と弁当を貰ってデモに参加しているので、民意とはかけ離れていて余り参考にはならない。
実行力がないのは官僚や政治家の支持が無いから致し方ない。初めからある程度は予想されていた事である。ジョコウィの汚職厳罰を恐れて、脛に傷のある官僚は総じて何も決めないし何事にも判を押さない。脛に傷のない役人など殆どいないから、誰も新しい事には結論を出さないし決裁もしない。従い何も進まない。これは汚職文化を変えようとすれば避けては通れない茨の道である。
メガワティは今もスカルノ人気に乗って政治家を続けているが、元々政治に興味はないからメガワティの言いなりになっているとは思えないが、メガワティの威を借る闘争民主党の幹部が色々と理不尽な注文を出していて、国会運営に闘争民主党の後ろ盾が必要なジョコウィが屡々妥協を強いられる事は想像に難くない。問題はむしろジョコウィを支えるのか喰い物にするのかの、闘争民主党の問題であろう。他にこれと言った人材もいない闘争民主党の取るべき道は一つしか無いと思うのだが。
中国に傾斜している可能性は、大統領就任後から僕も感じていた。共産主義に傾斜している訳ではないないが、実務家で、且つ国内のインフラ整備を公約しているジョコウィとしては、国内で政治家や官僚支持を得られない中、AIIB創設を筆頭に豊富な資金を手にアジアのインフラ整備をぶち上げる中国に接近するのも無理はないと思う。しかし如何贔屓目に見てもインドネシアが政治の駆け引きで中国を手玉に取れるとは思えないので、ジョコウィの中国傾斜は非常に危険である。ジャカルターバンドン間の新幹線建設でも、日本からの帰途に立ち寄った際に、さっさと技術協力の覚書を結んでしまった。こんなジョコウィを牽制する為か、来日中のゴーベル商業大臣が昨日東日本JRを訪問していた。無事故の日本の新幹線と、脱線事故を起こして直ぐに埋められてしまった彼の国の新幹線では比べ様もないと思うのだが。