baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 新政権に願う

 民主党政権交代を担う事が明確になって、益々期待と危惧が膨れて来た。民主党の地滑り勝利が過ぎて、町の声も徐々に冷静さを取り戻し、テレビでは新政権の具体的政策を探る番組が目白押しの毎日である。
 民主党マニフェスト。考えれば考えるほど票集めに徹した巧妙な戦略だったと思う。営農家に対する最低所得保障、無条件の子育て無料化、年金最低保証、など、直接恩恵を蒙る層の票は間違いなく集まるであろう反面、それ以外の層がその結果が間接的に影響して来るマイナスが理解されるほど身近な問題ではないので、結局票は集まるが反対票は殆ど出なかったであろう。
 インド洋の給油活動、選挙活動中でも、当初の直ぐに撤退する、から来年の1月までは継続する、など既にブレがあったが、テレビで前原副代表の発言を聞けば、給油活動は来年1月で撤退するがそれ以外の方法で引き続き貢献する、などと選挙活動中には一言も言及しなかった新しい政策が勝利から一週間も経たないうちに既に幹部から発言されている。消費税率上げも、4年間は凍結する、から、議論は始めましょう、という鳩山代表の発言。政治とは斯くも欺瞞に満ちたものだという事は分かってはいたが、それにしてもあまりの露骨さに唖然とする。翻って、自民党の無策は大敗して当然であった。
 まぁ、国内の問題は騙された国民にも責任がある訳で、それをどう辻褄を合せるか、民主党のお手並み拝見である。高速道路無料化、などは僕の見立てでは恐らく過疎地の、公共交通手段のない地区で無料化を図って誤魔化すのではないかと思う。いや、そうあって欲しい。高速道路を無料化するのなら、バスも鉄道もフェリーも飛行機も、全てを無料化しなければ不公平なのだ。受益者負担の原則を反故にするなら、新しい原則を普遍化しなければ不公平なのだ。そしてこれは、原始共産主義に通じる危険な思想である。
 が、普天間基地移転問題などのように、相手があるのに何の根拠もなく勝手な政策をぶちあげてしまった事案に、上手く落とし所が見つかるかが興味津々である。バラマキ政策の財源の問題は、選挙戦中の最大の話題であったから、今更蒸し返すまい。見守るだけである。ただ、先日もこの欄で書いたが、面子に拘って将来の日本にツケを残す事だけは絶対に避けて欲しいものだ。
 やはり最大の危惧は外交である。外交は一度間違えると内政以上に影響が長く尾を引くからである。鳩山代表の寄稿が既に米国で散々叩かれているが、外交無知の恐さがここにある。僅か10分間の、実は通訳が入るから実質はその半分程度の、オバマ大統領との電話会談で外交辞令でくすぐられて、もう日米関係は従来通りの蜜月だ、などと舞い上がっているから尚の事、不安は募る一方である。ワシントンポスト民主党に対する評価は相当辛口である。一旦公表してしまえば、それが転用であろうが何であろうが、もう元には戻らない。先日岡田幹事長が、鳩山代表の寄稿を米国で公表した事実はない、と開き直っていたが、そんな言い訳は田舎者の誹りを受ける以外の何物でもない。
 外交は、島国鎖国の日本が歴史的に最も弱い分野である。インドネシア駐在時代には議連(日本インドネシア議員連盟)の先生方など、色々な議員との面談機会に恵まれた。日本はインドネシアよりは経済的に発展しており借款も供与しているので、インドネシア側の日本からの国会議員に対する対応は極めて丁寧である。斯かるインドネシア側の対応に乗せられて、英語もろくに喋れない日本の議員先生は、何をしに来られたのか分からないまま友好促進に貢献したと興奮してお帰りになるとか、新しいプロジェクトを借款と抱き合わせで申し入れて利権を確保されて意気揚々とお帰りになるのが大半であった。中にはチャンスとばかりに、臆せずにたかってくる議員の秘書や、右翼もいたものである。
 こういう時、インドネシア側は皮算用をしているだけである。いくら心優しいインドネシア人でも、用もない議員には鼻も掛ける筈が無い。日本が使い道があるから丁寧な外交対応をしてくれるのである。長らく政権を握っていた自民党の議員ですらこの体たらくである。鳩山代表ですら国際的に赤恥をかいている、経験のない民主党議員を舞い上がらせるのは、外交のプロにとっては赤子の手を捻るようなものだろう。特に米・中・ソは具体的な交渉では非常に厳しい対応で来る事は目に見えている。交渉も技術なのだが、素人の民主党議員上がりの大臣ではテクニックも何もなく、江戸時代の幕府のような交渉になっても不思議はない。結局は民主党が目の敵にする外交官僚に頼らざるをえないのであろうが、ここでも面子に拘った、素人判断の軽挙妄動だけは呉々も謹んで頂きたいものだ。それと、多少は豊かだがまともな軍備もない日本の力を過信しないことだ。
 期待、多くは期待しまい。選挙公約のバラマキを謙虚に是正する事、面子に拘って選挙公約に拘るが余りに却って無駄な軋轢とそれに伴うコスト増を引き起こさないで欲しい事、官僚主導の行政の効率を高める事、行政の夥しい無駄を省く事、新たな汚職の温床を作らないで欲しい事、そして何にも増して切望するのは、明るい日本の未来像をお得意の嘘でも良いから具体的に描いて欲しい事、である。