baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 乗り物好きが高じて

 乗り物が大好きで、色々な免許を持っている。器用貧乏で色々ある趣味の一つも、大型バイクのツーリングである。大型バイクと言うと、先ずハーレーですかと訊かれるが、ハーレーは好みではない。バイクとしては決して性能が良い訳ではない。音は騒さいし振動は強いし、少しスピードが出れば風はきつい。ハーレーが好きな人はハーレーが好きなのであって、決してバイクが好きな訳ではあるまい。アメリカ人好みの、正に馬替わりなのである。だから、欧州に行けばハーレータイプのバイクはまず見掛けない。僕はカワサキの欧州タイプのツアラーとスーパースポーツに乗っている。「男はカワサキ」だと信じている。
 バイクは良い。空気を肌で直に感じ、匂いを感じ、ガラス越しではなく直接景色を見る。雨が降れば濡れるし、霙が降れば凍える。そして常に緊張して走っている。その緊張感がまた堪らない。しかし、大型バイクは重くて、乗るのにも結構体力が要る。特に止まっている時の取り回しがきついので幾つまで乗れるか、できるだけ長く乗りたいのは山々だが無理をして事故でも起こせば他人様にもご迷惑を掛けるし、見切り時があろうと覚悟している。
 その時に、風来坊をしたくなったらどうしよう、と考えて思いついたのがバスを改造したキャンプカーだ。普通のキャンプカーでは面白くない、バスの改造車だと思い付いて、大型の免許を取った。駐車場をどうするのか、とか、本当にバスをキャンプカーに改造するお金があるのか、とか現実的な話はその時のことである。大体バスの中古は100万km近く走っているから整備に凄く費用が掛る、かといって新品は数千万円、現実を考えれば初めから夢が萎えるのである。
 大型免許を取りに教習所に通っていたら、眼の前で牽引の講習をやっている。みんなバックに酷く苦労をしている。なる程難しそうだ。聞いてみたら大した教習時間でもないし費用でもない。好奇心だけで申し込んだ。確かに頭の右左を切り替えないとバックは混乱するが、慣れれば何とかなるもので、無事に最少時限で卒業できた。面白かった。面白ついでに大型特殊もやってみた。舵輪が後輪なので内輪差の考え方が前進後進で普通の車とは逆になる。後は別に発進の時の手順を覚えればどうということもないのだが、舵角が大きい事もあって車庫入れと方向転換、右左折だけには気を遣った。これも最短で免許を取った。と、色々免許を並べているが、未だにどの免許も公道で使った事は無い。無いけれども、戦車でも超大型トロリーでも、およそお客が乗っていなければ何でも運転できる、という事だけで十分満足である。そしてそのうちに、日本では誰も乗った事が無いような大型キャンプカーでも運転できるのだ。もっとも、戦車砲を撃ったり、クレーン等の特殊車両の本来の機能を操縦するには別の免許が必要となる。
 大型二種も面白そうだとは思うが、これは陸上免許の最高峰で相当難しそうである。取るとすれば試験場での一発試験となるが、普段練習もしていないので未だ挑戦する気にはならない。飛行機やヘリコプターも勿論大好きで、操縦出来るに越したことはないが、費用が物凄く高くて、実際に乗る予定もないのに免許だけ取るのは、幾らなんでもコストパーフォーマンスが悪過ぎて現実的ではない。体験飛行で小型機の操縦桿を持たせて貰ったり、タクシーイングのブレーキペダル操作をやらせて貰ったりして、本当に楽しかったのだがやはり踏み切れなかった。精々模型をやろうとは思っているが未だ時間がない。そこで、小型船舶の免許を取ることにして、翌年に小型船舶一級の免許を取った。
 陸上の免許は公安委員会が発給してくれるが船舶免許は国土交通大臣の免許である。何だか少し偉くなったような気がする。海図や港湾案内は海上保安庁売店で買う。ボートは時々気分転換に乗る。面白い。道がないので、原っぱをみんながバラバラに車で走り回っているみたいで、陸上とはまるで勝手が違う。また標識も信号もないから、陸上で、警察に管理されて走るのに慣れていると何とも頼りない。大型船がどっちを向いて走っているのか、どの位のスピードなのか、そもそも走っているのか止まっているのかすらも、遠くからだと素人には判然としない。行く先や現在地を教えてくれる標識もない。頼りはコンパスと遥か遠くの陸上の景色だけである。天候も急に変わり、突然波が荒くなったりする。そんな環境で緊張しながら操縦していると、気分は紛れもなく船長である。今年の春は川からお花見をした。結構な趣向であった。