baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 5日目の民主党政権

 今日、鳩山首相が初めての外遊でアメリカの地を踏んだ。早速胡錦涛中国々家主席と面談したそうだ。精力的に外国の首脳と面談するのは大いに結構なことである。聞けば首相はスタンフォード大学に6年も留学して英文で博士論文を書いた由、また夫人も米国留学組とのこと、殆どがマルドメ(まるでドメスティック)の日本の政治家の中では珍しい海外派ではなかろうか。二人して大いにその堪能な英語を駆使して活発な外交を展開して欲しいものだ。
 同じ時期に訪米していた外相の岡田克也クリントン女史と面談している。僕が一番不安を感じている新政権の外交、何とか上手くやって欲しいと切望する。クリントン女史には、米軍再編問題の現在の出発点は前政権との合意事項、といきなり釘を刺されたようだ。当たり前である。
 もうすぐ首相が国連の冒頭演説で温暖化ガスの排出を2020年に1990年比25%削減すると発表する予定と聞く。国内の産業界のコンセンサスも、また民主党政権としてその道程も、或いはその目標達成に必要となるであろう莫大な費用も国民に提示することなく、良い格好しいのフライングも甚だしいと危惧するが、総論では本当に実現できるのなら別に間違ってはいないと思う。ただ、国内でこの首相構想を発表した翌日には国内の産業界の猛反発を受けて早速民主党十八番の軌道修正をし、主要温暖化ガスの排出国全てが参加する事が前提と追加条件を付けた。
 が、国際社会では端からこういう予防線を張っったからと言って中々通用しない。日本のコミットする数字だけが独り歩きし、他の主要排出国は色々な理屈をつけて自分の国だけには甘い目標を設定して、自国製品の国際競争力の維持や資金負担の軽減を目論む事は明らかである。外交の素人が理想に走って早くも日本国民に莫大なツケを押しつけようとしている、と言われても仕方のない愚挙である。鳩山首相は外交には全く経験のないズブの素人なのだから、良い格好をせずにもっと様子を見ると言った慎重な行動が望まれる。外交は駆け引きであると言う大原則を忘れて軽挙妄動をされては国民が困るのである。とはいえ今日にはもう間に合わないので、これから日本が国際社会で赤恥をかかないよう、且つ脂肪の塊にならないように上手く着地点を見付けて欲しいものである。今の首相が2020年に現役であるとは思えないので、全く無責任な発言をしてくれるものだ。
 首相は新党を立ち上げる程の政治家だから、誠実そうに見える表向きはともかく政治家としての資質と力量はあるのだろうが、菅直人共々全く捉え所がなく僕には相変わらず未知数である。小沢一郎に至っては元々田中角栄の秘蔵っ子だったぐらいだから、若手議員の理想主義とは一線を画すし、政治の本質が理想だけではなく財布であることも十分弁えている。だから選挙上手と言われるし、権力は簡単には手放さないから世間で言われる二頭政治になっている。そんな中で、岡田克也は理想主義の中にも極めて現実的な視点を持っており、この3週間彼の発言を読み聞きして当初の彼に対する僕の危惧はかなり減ぜられた。しかし、そんな彼はやはり今回の組閣と党人事からは完全に外されていた。
 危ういのが前原誠司亀井静香である。前原は民主党一の論客だそうだが、自分の理屈に酔ってしまって何か勘違いしていないだろうか。ここ連日喧しいのが八ッ場ダム建設問題である。八ッ場ダムの建設を決めて地元住民、或いは関係自治体と契約したのは日本国政府である。政府を運営する顔ぶれが替わったからと言って、約束を反故に出来る理屈はどこにもない。例え前政権が約束した事が意に反するからと言って、後戻り出来ることと出来ない事がある。八ッ場ダム建設問題は、倫理的にも経済原理的にもどう見ても後者に属すると思われる。
 卑近な民間会社に例えれば分かり易い。民間会社で社長が交代し、それに伴って経営陣の多くが入れ替わる事は日常茶飯事である。しかし経営者が交替したからと言って、会社として契約している事を反故にできるだろうか。裁判にかけるまでもなく自明である。政権交代とは正にそういう事ではなかろうか。地滑り的な勝利に酔ってしまい、或いは自己の論理に拘り、人気取り政策を散りばめたマニフェストに拘り、肝心の大元を見失ってはいないだろうか。面子に拘って道を踏み外さないで欲しいと僕が衆院選の結果を見て念じたのが正にこういう事だったのである。米軍再編問題についても同様である。日本国政府が米国に対して合意した事を見直す、といとも簡単に言うが国内向けの人気取りにはそれでも結構だが、対外的にはどう贔屓目に見ても通る話ではあるまい。詳細の条件交渉の過程で少しでも軌道修正するのは結構だが、真っ向から前政権のやったことは知らぬ存ぜぬは余りにも大人げないし、国内での人気取りに過ぎると同時に国際社会での信用を失墜させるものである。どこかの大国が日本との北方領土問題で正に今の民主党と同じ伝で、一旦両国間で合意したことを厚顔無恥にも翻して勝手な発言を繰り返しているが、我々日本人から見てもその某大国は国際社会では世間知らずの田舎者ではないか。
 亀井静香に至っては開いた口が塞がらない。はからずも入閣したことで育ちの悪さと権勢欲が一気に噴き出た感がある。ここ数日の彼の放言は論評するにも値しないので多くは述べないが、連立政権の宿命とはいえこういう党首はもう少し無難なポストで入閣させないと、日本が危うくなる。