baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 友人のライヴを聴く

 大学時代の友人がライヴをやるという。地元ではそれなりに名の通ったフランス料理屋で、食事と飲み放題のワイン付きだというライヴなので喜び勇んで行く事にした。折角なので、こんな素人ライヴを楽しんでくれそうな友人二人を誘い、三人で聴きに行った。実は素人と決めつけるのはいささか失礼で、中にはプロの演奏家も交じっている。我々三人、少し早目に行って一番前の席に座ったのは大正解であった。皆器用で何種類もの楽器を弾き分けるのだが、一番前に座ったお陰でその一つ一つが目の当たりに出来た。
 主なメンバーはみな僕と同学年である。そのメンバーが既に40年続けてきたバンドだそうだ。40年続けるということは、何事につけ大したものである。僕はと言えば、その友人とは大学時代には同じ学科で何となく気が合って、一緒にスキーに行ったりハイキングに行ったりしたが、彼はカントリーウェスタンで当時から結構ライブハウスに出たりしていたし、僕はオーケストラでコンマスをやっていたから、お互いに忙しく授業に出る時間など無いから普段は滅多に会わなかった。しかも、知らない間に彼は大学を休学してスペインに行ってしまうし、僕は大学を出たら、別に望んだ訳ではないのだが、商社と言うとんでもなく人使いの荒い会社に入ってしまったのでその後は一層会う機会もなくなってしまった。学園紛争の嵐の中で、僕も彼も翻弄されたのである。
 最近になってお互いに歳を重ね、精神的にも時間的にも余裕が出来たので何となく数年前に再会した。その時に今日のバンドの話を聞かされた。彼は昔から五弦バンジョーを弾いていた。僕は五弦バンジョーがフィーチャーされるブルーグラスというカントリーが子供のころから大好きで、学生時代は彼のバンジョーに憧れたものである。その頃の彼は、33−1/3回転のLPレコードを16-2/3回転で聴いて音を拾いながら独学をしていた。この早さの比は調度音程がオクターブ下がりテンポが倍になるので、バンジョーのようなアップテンポの曲を彼はこうして独学していたのである。僕もフィドゥラーとして何度か誘われたが、残念ながらクラシックしか弾いた事のない僕にはカントリーのフィドルの何とも言えないほんわりした音が出せず、仲間になる事はなかった。
 今日のライヴ、若い人も交じっているのだがそこは老人パワーの専権で老人が幅を利かせている。皆中々の芸達者で器用に演奏するし、そもそもステージに置かれている楽器の種類が半端ではない。同伴した友人などは、あの楽器は未だ出て来ないけどどうするのだろう、などと心配するほどである。その多種多様な楽器も結局全て使われた。件のバンジョー弾きも、バンジョーに加えMC、ギター、ボーカル、更には12弦のチャランゴという変わった楽器まで弾いて、それは熱演であった。若い人達も上手に老人を引き立てて、出しゃばらず、でもしっかり音楽を纏めていた。数日前にこのブログに書いたカホンもあった。上手い人が叩けばあれ程までに音楽を作れるのかと、大いに勉強させてもらった。
 今日のライヴは老若男女の素晴らしいハーモニーであった。バンドの創設者は既に他界されてしまったそうだが、その心意気は仲間達が脈々と受け継いでいる。そして、音楽は世代を問わず常に僕等を楽しませ力付け、そして聴く人の心を一つにしてくれる媒体だという事を再認識させてくれた、楽しい一時であった。