baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 民主党政権一ヶ月

 民主党政権が発足して調度一カ月になる。徹底的なムダの排除を謳い本年度の補正予算案を滅多切りにしている民主党だが、来年度の一般会計歳出の概算要求では史上空前の総額95兆円になってしまった。票集めの人気取りばら撒き政策で、当初から疑問視されていた財源の裏付けが無かった事が実証された。財源の事を考えなければ一見反対し難い、巧妙なマニフェストに騙された人は多いと思う。しかし、こうして見れば結局は財源は国民の税金に戻ってくるのである。当たり前の分かり易い話が、段々見えてくる。未だCO2排出抑制と、高速無料化・ガソリン暫定税廃止・エコポイント廃止、などの矛盾にも折り合いを付けて行かねばならない。
 官僚主導から政治主導へ、と勇ましいが、本当は国民主導であるべきなのだ。ただ、行政はあまりに複雑で専門知識が必要だから、国民は長い間官僚に実務を委ねて来た。ところが長期に亘り政権を握って来た自民党の政治家が余りに不勉強で官僚の意のままになってしまったので、一部に官僚のやり過ぎがあったのは否めず、その結果政治主導という言葉が目新しく聞こえた。しかし、結局は政治三役と官僚との会議の連続であると聞く。たかが一ヵ月で右や左の分かる訳が無い。
 民主党議員の錯覚の甚だしい例が、総務省小川淳也政務官の発言である。曰く「役人は先の心配をするから決断できない。政治家なら思い切った決断ができる」。そりゃそうだろう。政治家は5年経って落選すればそれまでで、その先に何の責任もないから、次の選挙の票集めが目的であれ何であれ、幾らでも無責任な決断が出来るのである。仕事に責任のある人間なら、そう簡単に大きな方針転換は出来ない。若い人が決断が出来る権力に酔うのは結構だが、決断の度に政策が大幅に揺れ動くなら、結局迷惑するのは国民なのである。小川の年齢ならば、未だまともに人の上に立った事もなかろう。世の中が分かっていない。
 普天間基地問題は調子に乗り過ぎの民主党の好例である。僕は前から、政府間の合意事項は多少の軌道修正はともかく、合意事項の根本的見直しはあり得ないと言って来た。訪米から帰国直後の鳩山総理も一時は沖縄県内での移設も有り得る、と軌道修正するかに見えたが、翌日にはまた県民の意向が一番重要であると前言を翻した。そして、その後は態度を明らかにせず、早々と来年の決着を言い出している。これは明らかに来年の参院選を念頭に置いた政治的発言である。落とし所は沖縄県内である事は見えて来た。敢えて今それを口にしない。政治家はずるい。しかし、米国を敵に回して来年の参院選対策を優先するのは、それこそプライオリティが間違っている。さしもの民主党も近じか呑気な事は言っていられなくなり、現実の厳しさに曝されよう。米国相手に国会答弁みたいな事は言っていられないから、さだめし見物であろう。
 一般論として政権交代は旧来の陋習を是正するには手っ取り早いし、一党が政権を長く持ちすぎるのはやはり何かと弊害が多いと思う。だが、こうしてこの一カ月を見て来ると、新たに政権を取った政党が前政権の政策を何が何でも否定する事から始めるのでは、やはり世の中が混乱するのが見て取れる。現に米政府高官からは、普天間基地問題に絡んで、民主党には自民党政権時代の合意であるが為だけに反対している政治家がいる、と揶揄されている。
 我が国は、戦後初めて真の意味での民主化が進んだ訳だが、多少の例外期間はあるにせよ実質的にはその間ずっと現在の自民党に繋がる政権が支配して来ており、本当の意味での政権交代は今回が初めてと言える。それだけに民主党が張り切るのは分かるが、同じ民主党の中でも選挙対策を常に頭に置いている老獪な議員と、若くて経験もなくただ張り切っている議員との間に、実は相当な乖離があるのではなかろうか。
 政権交代に伴う政策変更とは、真に国の将来を思う信念に基づいたもので、敵対政党の築いてきた既存の政策の批判とぶち壊しではなく、むしろ新たな良い政策を自分の政権時代に始めるという事ではなかろうか。更に、前政権から引き継いだ不本意な政策であっても、既に止められないところまで来ている物については敢えて混乱を招かぬように引き続き推し進める度量があって、初めて本当の政権交代と言えるのではないか。鳩山政権には一ヵ月、二ヶ月で功を焦らず、また来年の参院選に捉われ過ぎることなく、本当に国の将来の為になることを始めて欲しいものである。