baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 温暖化ガス排出

 鳩山総理が国連総会で温暖化ガスの排出を日本は1990年比25%削減すると公言した(9月22日本ブログ)。あれから2ヶ月、来月のCOP15首脳会議に向けて各国も目標設定を公表しつつあるようだ。
 日本の場合は、GDPでは世界の8%であるのに対し温暖化ガス排出では既に4%に過ぎない、温暖化ガス排出では既に世界平均の50%に過ぎない最先進国である。また、世界の温暖化ガスの40%がアメリカと中国の二ヵ国によるというのは既に誰でも知っていることで、この二ヶ国がどういう目標を設定するかが日本の削減目標以上に最重要である。更にインドやブラジル、ロシアなどの新興工業国が今後よほど努力をしてくれないと中々実効性が伴わない。
 色々な計算があるので数字が錯綜するが、日本では1990年比2020年までに25%の温暖化ガス削減をする為には、企業のコスト負担とは別に一家庭当たり月3万円のコスト負担になるという試算がある。年間36万円である。総理がフライングで外国に良い格好をするのはパーフォーマンスとしては気持ちが良かろうが、果たして全ての国民にその覚悟があるだろうか。また、日本が25%削減に要する費用を他国が使えば アメリカは44%、EUは39%、ロシアは59%削減可能だそうである。これは日本のコストが高いと言う事ではなく、日本の現在のレベルから更に25%削減するのに要する費用を他国が使えばこれだけ削減可能という例であって、原単位コストの比較ではない。日本の削減は既にそのレベルにあるという例である。EUは1990年には未だ温暖化ガス削減に手の付いていなかった中東欧諸国が現在はEUに加盟しているので、1990年比の削減はいとも容易い話なのである。
 何故中国やインド、ブラジルが先進国に費用や技術の提供を求める半面自分達新興国の削減義務化に反対するかと言えば、輸出競争力が削がれ経済発展に悪影響が出るからである。アメリカでも、輸出競争力はそれほど大きな問題ではなくとも、企業や国民に対する大幅な負担増になり経済減速のファクターになる。EUについては明らかに国際競争力が落ちるのを避ける目的で、割り勘負けしないように巧妙に自己保護をしている。
 各国がそういう目線でお互い探り合っている時に、いきなりマルドメ(まるでドメスティック)の鳩山総理が、国内の人気を取る為だと思うのだが、国連総会で世界に向けて割り勘一人負けの排出削減目標を公言してしまったのである。各国が一緒に公平な目標を設定して同じ努力をするのなら地球環境を守る為に反対する理由はないが、鳩山総理のコミットは日本が一国だけとんでもない割り勘負けする話なのである。鳩山総理は前提条件を付けたと何れ言い逃れする時があろうが、もし本気でそんな言い逃れをする所存ならそんな前提条件が世界で通用する筈がないこともご存じないらしい。
 新聞報道によれば、各国は基準年がバラバラのまま12月のCOP15に向けた目標設定を公表しているらしいが、これを先日の日本のコミットと同じベースの1990年比に置きなおすと日本の25%削減に対して、アメリカは3%、豪州は13%増〜11%減、カナダは3%減。EUは20〜30%減だが濡れ雑巾のような新規加盟国があるので先進国の実質目標はそれ程高いハードルではない。如何に日本が一人で貧乏くじを引いているかが明白に分かる。これでは日本の企業はもう日本では生産活動を続けられなくなり、削減目標の甘い新興国に製造設備を移転するしかないのである。しかも派遣社員の雇用が製造業で禁止されれば、四面楚歌になる。
 理想主義、社会主義的な傾向の強い民主党政権の実態に、有権者もそろそろ気付いて批判を始める時が来ている。