baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 ハマス幹部暗殺

 日本では余り大きな記事にはなっていないが、パレスチナ原理主義組織ハマスの軍事部門のトップであったマハムード・アルマブが先月の20日アラブ首長国連邦ドバイのホテルの一室で死亡しているのが発見された。彼は1989年に、投降したイスラエル兵2名を直接殺害した容疑、及びイランからの武器密輸容疑でイスラエルが永年追い続けてきたと聞く。死因など詳しい事は知らないが、暗殺と断定されている。ドバイの警察当局は、暗殺には少なくとも11名のプロが関与していると発表、顔写真も公表しほぼ間違いなくイスラエル諜報機関の仕業と発表した。またこの11名が本物の欧州各国のパスポートでドバイへの入出国をしていることから、英・独・仏・アイルランドなどが独自の捜査を始めたそうだ。
 シオニスト率いるイスラエルの情報機関は世界最強の集団テロ組織である。しかも国家が後ろ楯であるから、北朝鮮のそれと同じである。違うのは北朝鮮は世界的に孤立しているのに対し、イスラエルは米英を初めとする西側の支援があり公認されているという事である。少し古い話だが、1981年6月7日にイラクの原子炉をイスラエル空軍が空爆したという国際法を無視した暴挙を行った時も、モサドが暗躍した事は今や周知の事実である。僕の本棚の何処かにもある筈なのだが、この時の経緯をノンフィクションで書いた米国の小説が非常に面白かった記憶がある。
 僕に言わせればイスラエルという国自体が、例えばガザ地区で平気でパレスチナ人の婦女子を虐殺するテロ国家であるから、その情報機関が超法規的にイスラエルが敵視する人物を抹殺するのは当然である。国がテロ国家ではなく人権擁護の仮面を被っている米国のCIAでも、何処で誰を殺しているか分かったものではない。僕の知っているところではインドネシアのBINはやはり超法規的な抹殺を実行するし、その道のプロも養成している。あまり手際は良くなかったが、数年前にガルーダ航空の機内で人権活動家と称するオランダのスパイが毒殺されたのもBINの犯行である。今でも続いているかどうかは知らないが、そもそもBIN(当時はBAKIN)の幹部は以前は米国のCIA施設で教育されていた。北朝鮮の事は韓国のニュースが早いが、韓国にはKCIAという、以前金大中を日本から拉致したれっきとした諜報機関があるから情報が早いのである。最近ではタリバンのNo.2と言われるアブドゥルガニ・バラダルがCIAとパキスタン当局の合同作戦で拘束された。これも単なる捜査ではなく諜報活動の成果である。
 日本は平和で、本当の意味での独自の諜報機関はない。内閣調査室、警察庁防衛省、外務省、国家公安委員会などが独自に情報部門を持っているが横の連絡に乏しく、またプロの養成も到底外国のレベルではないと聞く。僕の知っている日本の某情報員のしていた事と言えば毎日現地の新聞の切り抜きに翻訳を付けて送る程度であった。それでも表向きの肩書は勿論情報員とは懸け離れた、NPOの肩書であった。独自の活動費がありそれなりの情報提供者を押さえているかどうかは流石に分からなかったが、そういう筋が例えあったとしても企業の駐在員の情報収集と同レベルのものであったと思う。もっとも彼は初めから情報員であり諜報員ではなかったので、その程度の仕事で十分だったのだろう。
 何れにしても日本の情報機関は、海外での謀略などとは程遠い組織であると思う。謀略や殺人はしないですむに越した事はないが、少なくとも情報収集能力と防諜能力はもう少し高めないといけないのではないかと思う。バラバラの情報部門をせめて統一すべきではなかろうか。そしてスパイ天国と言われる日本での外国諜報員の監視の強化や、特に昨今はサイバーテロに対する防御力を国を挙げて高める必要があると思う。
 世界には日本人が小説でしか知らない、裏の世界の陰湿な戦争が毎日何処かで行われているという事を思い出させてくれるハマス幹部の暗殺事件であった。