baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 早朝の遺失物探索記

 やっと春らしいお天気が落ち着いてきた。また今週は4月の陽気に戻る日もあるようだが、それでもついこの間の、桜に雪が降ったり連日15〜16℃も温度が上下する毎日に比べれば、すっかり春めいて来たと実感する。陽も随分早くなって、5時にはもう外はすっかり明るい。
 昨日物騒な落し物をしてしまって、何だか落ち着かない気分だったので今朝は5時に目が覚めた。外は温かいし、突然一度昨日の道をそのまま辿ってみようという気になり、取る物も取り敢えずバイクに跨った。道が混んでしまっては元も子もないので、往きは首都高を使う事にした。車道に落ちている、長さが精々30cm程度の包装したままの箱など、わざわざ拾う人もいないかも知れないという気持ちもあった。バスやトラックに轢かれても、鋼だから簡単には折れていないかも知れない。
 早朝の都内は殆ど車も人通りもなく、首都高もまばらに車が走っている程度である。お陰でそれ程飛ばした訳でもないのに、江戸橋の出口まではあっと言う間であった。そして日本橋のスタート地点から、昨日と同じ道を辿り始めた。昭和通りはトラックやトレーラーが多く、早朝だと言うのに結構な交通量であったが、そこから靖国通りに左折したらもう道路は独り占めに近い。ゆっくりと流しながら道路の左右に目を配る。日本の道路は本当に綺麗で、ゴミも殆ど目につかない。所々、コンビニの前だとか飲食店の前にゴミが溜まる場所があるようだが、他の処は紙屑一つ落ちていないので、落し物を探すには絶好である。
 僕は普段は余り早起きではないので知らなかったのだが、朝の5時半位にはもうゴミ収集車が沢山走っていた驚いた。繁華街の前の晩のゴミを早朝に回収しているのである。ご苦労様な事である。しかしひょっとすると夜中に僕の遺失物がゴミと一緒にされてしまったかも知れないと、少し心配になって来た。
 靖国通りの九段を左折して、千鳥ヶ淵を抜けて半蔵門から新宿通りへと、相変わらずキョロキョロしながら流して行く。千鳥ヶ淵では交番の巡査が交番の周りの掃き掃除をしていた。皆さん早朝から勤勉である。僕はと言えば、トラックに追い抜かれたりもするが、とにかく殆ど車がいないので別に誰の邪魔にもならない。新宿通りに入ると、靖国通り以上に沢山のゴミ収集車が活躍している。四谷から新宿寄りはもう歩道にはゴミの山が数え切れないほど積み上げてある。しかし車道には相変わらず殆どゴミはなく、探し物は一向に見当たらない。道端に駐車しているタクシーやトラックの下にでも入っていない限り、見落としはないと思う。
 昨日は新宿御苑下のトンネルが混んでいたので、新宿御苑沿いに甲州街道に出たから今日も同じ道を辿る。早朝の散歩か朝帰りか、一人歩いているちょっと目を引く中年女性以外は車も人もまるで見当たらない。結局そのまま甲州街道を通って、何も見付からぬまま家に戻ってしまった。それでも家を出てから未だ一時間も経っていない。昼間だと片道一時間近くは掛るのに、道路を独り占めする事の何と気分爽快な事か。
 物騒な落し物はもう消えているので、未だに事件も起きていないし、もう余り心配しなくても大丈夫であろう。それにしもて交通量の多い幹線道路の車道への落とし物が一晩で消えてしまうとは。ゴミに混ざったものか、誰か奇特な人に拾われたものか、現金が消えるのならともかくやはり東京は魔物の棲む都会なのかも知れない。
 ところで、一般に道路のゴミは少ないのだが、ペットボトルや缶コーヒーの空き缶様の物があちらこちらで目に付いた。折角道路が綺麗に整備され清掃されているのに、夜中に酔っぱらいか無神経な若者か、或いは心無いドライバーが飲み終えた容器をポイ捨てしているのであろう。誠に残念な事である。20年程前には一時期、本当に公衆道徳が浸透して道路にゴミが無くなった時期がある。是非またあの頃に戻って欲しいものである。警備上の理由で公共の場所からゴミ箱が無くなってしまった事にも原因の一旦があるのかも知れないが、自分の出したゴミは自分で責任を持ってしかるべき場所に処分するか、或いは外での立ち飲み立ち食いは慎むかして欲しいと思う。