baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 今場所の大相撲

 横綱白鳳が益々円熟味を増して、11日目にして早くも独走態勢に入っている。白鳳は外国人力士でありながら横綱としての品格は充分で、且つ強いだけでは無く相撲の上手さ、集中力、何れを取っても大横綱の風格を呈し始めている。怪我さえなければ当分白鳳時代が続くであろう。
 昨今の大相撲は品格に欠ける横綱がいなくなり、すっかり品が戻った。喜ばしい事である。大関日馬富士が時としてダメを押したりして朝青竜を彷彿とさせる時もあったが、今場所はそれもなく苦々しい相撲が少なくなった。嫌いなのは張り差しである。これも朝青竜が屡使ったし、白鳳も昨日やっていた。しかし、白鳳は前に出る圧力が凄いのであまり当たらないが、大抵の力士は張った分そちらの手の動きが遅れ、必ずしも効果が上がっていないのみならず、マイナス効果が頻繁に見受けられる。猫だましでもあるまいし、張り差しは止めて欲しいものだ。ましてや、受けて立つ横綱に張り手は似合わない。
 ところで、白鳳に続く力士がまるで見当たらず、相撲の品格が戻って嬉しい反面、何とも淋しい今場所である。ここのところ進境著しい把瑠都にファンの期待が一心に集まったが、大関として初の場所で固さもありなかなか期待に添えない。そもそも琴欧洲にも期待が大きい筈なのだが、この大関は勝つ時と負ける時の落差が大きすぎる。負ける時のもろさは目を覆うばかりである。実は琴欧洲のポーカーフェースが好きで僕のご贔屓なのだが、ここのところ足踏み状態が続いている。立ち合いに思い切っていける相手には滅法強い時がある反面、立ち合いに変化するかも知れない相手には腰が引けてしまってさっぱりである。思い切りよくもっと前に出る相撲に徹すれば、それ程負ける相撲取りとは思えないだけに、歯痒い事である。この大関の弱点は昔から精神面にある。精神力を鍛えて早く一皮剝けて欲しい物である。
  そんな中で、星には反映されていないが今場所の雅山の相撲が素晴らしいと思う。元大関ながら平幕に落ちてしまっているが、殊に今場所は真摯に、そして勝負を諦めずに勝っても負けても勝負がつくまで自分の相撲に徹しようとしている姿が素晴らしい。年齢もあり随分と苦しい相撲もあると思うのだが、徹底して離れて相撲を取ろうとしている。大相撲を取ってもそれ程息も上がっていないところを見ると、稽古も随分しているのだと思われる。今場所は前頭筆頭で上位とも当てられ、苦しい場所が続いているかも知れないが、是非残りの4日間を頑張って欲しいものだ。
 古参力士で言えば魁皇も相変わらず頑張っている。体中ボロボロの筈だが、今場所は成績も良い。この人の小手投げで琴欧洲を含め随分色々な力士が肘を壊されているので、僕はどうしても好きにはなれないが、この頑張りと土俵に対する真摯な態度はやはり力士の鏡と言える。幕内の勝利数は二桁勝利が当たり前の横綱と、勝ち越したり負け越したりの大関との比較は公平ではないので、魁皇最多勝利というのが僕は気に入らないのだが、やはりこの年齢まで身体を手入れしながら大関の地位で取り続け、それだけではなく未だに目を見張らせる相撲がある事には敬服しかない。
 白鳳に続く力士として琴欧洲同様、周囲の期待が大きいのに中々期待に応えられない力士の他方の雄が稀勢の里である。気風も良いし身体も良いのだが、何故かコロコロ負けてしまう。やはり出稽古に出られないのもマイナスになっているのではないかと思う。稀勢の里の師匠である鳴門親方の方針で出稽古が禁止されていると聞く。どういう理由なのか聞いた事がないのでコメントは出来ないが、やはり若手力士には武者修行をさせて色々なクセの力士と稽古をさせるべきであろう。稀勢の里の伸び悩みはその辺にも原因の一端があると思う。親方にも考え直して欲しい物である。
 横綱が強いのは良い事である。一人横綱の白鳳には気の毒だが、次期横綱候補が見えない現状、一人横綱で当分頑張って貰うしかない。そして、相撲の品位と風格をしっかりと護って欲しい。この横綱にはそれが出来ると信じている。