baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 金星探査機打ち上げ

 金星探査機「あかつき」が無事に打ち上げられた。金星はヴィーナス、つまり絶世の美貌を持った女神の名前で呼ばれる、地球の直ぐ内側にある兄弟惑星である。地球と大きさや質量が最も近い惑星で、明けの明星、宵の明星と呼ばれる。「あかつき」はこれから半年掛けて金星に接近して、年末までには観測が始まるそうだ。同時に「イカロス」と言う名の、太陽風を受けて走る宇宙ヨットも無事切り離された。何だか風呂敷みたいな形で、日本丸のような帆を張った船を連想していたので少しイメージが狂ってしまったが、エンジン無しで宇宙を太陽風で走り回る船と言うのも、何ともロマンがある。アイディア自体は随分古いらしいが、それを実現させると言うのだから日本人も中々洒落た事を思い付く。
 「あかつき」の打ち上げをきっかけに少し金星について調べてみた。すると色々面白い事が分かった。例えば、自転が非常にゆっくりしているので金星は惑星の中で最も真円に近いという事。地球は赤道の部分が遠心力で膨らんでいるので楕円だという事は知っていたが、金星の243日周期の自転(但し自転が地球とは逆なので1日は117日)では遠心力は殆ど働かないようだ。
 金星の地表は90気圧もあるそうだ。そして大気の大部分を占める二酸化炭素の温暖化効果で、地表温度は400℃を越えているという。資料により平均420℃であったり464℃であったりするが、要するに物凄く熱い訳だ。そして常にジェット気流が流れているので昼も夜も温度差がないという。このジェット気流は時速350kmという高速で、何故そんな高速の風が吹くのか未だ分かっていないそうである。対流という説もあるようだが、どうも対流だけでは説明がつかないらしい。
 面白いのは、金星の地軸は上下逆さまだと言う事である。何故惑星の上下が決まっているのか一瞬不思議に思ったが、自転の方向が金星だけ他の惑星と逆なのだそうだ。つまり金星では西から太陽が昇り東に沈む、或いは全ての天体が西から昇り東に沈む訳で、やはり地球人から見れば、そして他の惑星と比べても、上下があべこべになっている訳だ。もっとも南半球に行けば太陽が北側に見える事もあるから、僕等の習慣は単に慣れであって環境が変われば驚く事は沢山ある。金星の地軸が逆さまである理由も分かっていないそうだ。金星には衛星がないから、何かが衝突した訳ではないのかも知れない。となるとどうしてひっくり返ったのか、興味津々である。
 金星には当初は地球と同じ海があったという説もあるらしい。簡単に言えば、金星ではそれがみんな蒸発してしまったが、地球では生命の源となり二酸化炭素も吸収してしまったという説明のようである。その他、次から次へと面白い説明があって、興味は尽きない。
 金星の謎が解けたからといって僕等の生活に影響がある訳ではないが、やはり宇宙の謎が解けるのは夢があって楽しい。ワクワクする。惑星の誕生の謎がまた少しでも解明されれば、何とも楽しいではないか。今回初めて知ったのだが、もう金星の地図が出来ている。良く考えてみれば、何億光年も彼方の星の観測までしているのだから、金星の地図があっても少しも不思議ではないのだが、でも地球の世界地図のような金星の地図を見たら、やはり一瞬新鮮な驚きが走った。標高差も分かっている。レーダーで観測したそうだ。海が無いのに基準の高さがあるようで、どうやって基準を決めたのだか不思議だが、高い処は11,000〜12,000m、低い処はマイナス1,500m程度のようである。地球は大体高い処で9,000m、低い処で11,000m程度であるから地球よりは幾分平らな惑星と言える。そして地図上の地名はどれも女神の名前だと言う。やはり古来金星は人類にとって特別な星だったようだ。
 日本のロケットもすっかり安定してきて、打ち上げ成功のニュースにも以前のような話題性は無くなって来た。普段はH2Aロケットだが、先日の宇宙ステーション用の実験棟の打ち上げにはH2Bという馬力を上げたロケットが使われ、何れも成功している。今回の打ち上げで、打ち上げ成功率は94.1%になったと言うから、もう世界でも押しも押されもせぬ安定したロケットになったと言える。昨年の事業仕分けで中型ロケット開発が中止されてしまったが、返す返すも残念である。ロケット開発は金喰い虫で事業仕分け人には到底理解出来ないだろうが、宇宙という大ロマンに挑む、日本人の夢を育む素敵な技術だと思うのだが。