baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 事業仕分け

 事業仕分け。今の事業仕分けは日頃から不快なのだが、そもそも名前が良くない。仕分けと言うと二者択一で黒か白かに決めるニュアンスが強い。しかし本来は、中には全く不要なものもあろうが、大部分は不要ではないが無駄が多いというのが実態ではなかろうか。従い仕訳ではなく、評価とか見直しであるべきなのだ。そして本質的には、事業仕分けでやろうとしている無駄の排除や見直しは常に必要なことであり、大いにやるべきだし恒常的にやるべきなのである。以前にも書いたが、虎ノ門界隈の訳の分からない独立法人の数の多さを目の当たりにすれば、反対する一般人はいないと思う。
 しかし、民主政権がここぞとばかりに官制事業や独立行政法人を頭から悪と決め付けるような、或いは財源を捻り出す事を一義とした一方的なやり方で、しかも時間を極く短時間に限ってしまいロクに其々の立場の人の話も聞かずに仕分けるのは極めて不合理である。その上悪い事に、如何にも国民に開けた印象をアピールする為にインターネットで常に中継しているのが、益々不合理に拍車を掛ける事になる。こうなると政治家のパーフォーマンスの場になってしまって、視聴者を意識した発言ばかりで、本質的な質疑ではなくなっている。
 先日も、免許更新の度に渡される交通教本について「どれだけの人が持って帰っていますか」と、今や仕訳人の顔のようになっている元グラビアアイドルが居丈高に質問した。道路交通法は1年か2年に一度は改正があるのが普通で、一方免許更新は3年か5年に一度であるから、免許更新の時に新しい道路交通法を知るのも大事だし、日頃忘れている規則や注意を思い出すにも良い機会である。その為に渡される交通教本は、本来運転する者なら必ず一度は読まなければいけないし、次の免許更新まで取って置くべき本である。それを帰り際に捨てるような輩は不心得者に過ぎないのであって、そう言う人間を想定していない事はそれ程責められるものではないと思うのだが、回答者が答を用意していなかったら鬼の首を獲ったように「それじゃ、ダメですよ」と罵っていた。この質疑は僕に言わせればまったく本質を踏み外していて、本質的な事は交通教本を交通安全協会という警察庁や警察の天下り先の組織が独占しているのが問題な筈である。もっとも理屈はそうであっても、こういう特殊な教本はそう簡単に誰にでも作れるものではないし市販されるものでもないから、解決策も簡単には見付からないであろう。何れにしても、質問する側が問題の本質などは理解していないまま、回答者が想定していなかった裏をかくような質問で目立とうとしているだけで、こうして限られた時間を無意味な質疑に費やしているのも実況中継と無縁ではあるまい。
 本件に限らず、上げ足を取るような質問と、緊張の極みに置かれた回答者が少しでも言い淀んだり言い間違えたりした時の、畳み掛ける追及や雑言の何と多い事か。しかも仕訳する人とされる人だから、最初から目線が違う。仕訳人は知識も経験も知見もないぽっと出の議員が中心だから、そもそも内容を正しく理解する能力もない。本来なら判断を下す前に実情と専門的な観点については詳しく教えを請わなければいけない立場なのだが、事業仕分けでは完全に上から目線で詰問口調、答える方はサンドバッグ状態になっている。見るのも不愉快である。
 こんな不公平な事業仕分けは早くやめた方が良い。非公開で構わないから、それぞれの事案に長けた専門家も入れてその意見も聴きながら、必要に応じてある程度は時間も掛けて見直すべきである。そうなれば地味ながらも実のある見直しが進むであろう。更に、地味になれば新人議員になったばかりの唯の素人の自分の娘を無理やり仕訳人にゴリ押しするような、亀井静香の如き閣僚も出て来なくなるであろう。この一事を見ても、今の事業仕分けは国会議員の売名の場所なのである。
 同時に、公務員の人事制度や給与制度の改訂なくして、独法の事業仕分けだけやるのは片手落ちであると言うのが僕の持論である。定年まで奉職出来ない国家公務員を沢山作り出してしまう反面、嵌めこみ先の独法などを締め上げてしまえば、先ず大量の失職者が出るか税金では賄い切れない高給の官僚が増えてしまう。中長期的には国家公務員は魅力のない職種となり、優秀な人材が集まらず行政に甚大な悪影響を与えてしまう。従い、民間企業同様の定年制や人事制度、高齢者の給与見直しなどを並行して行い、天下りポストを不要にすると同時に、全ての国家公務員が定年まで働いても維持できる給与制度にしなければならない。
 とにかく政治家のパーフォーマンスは軽薄なだけで中身が全く伴っていないから極めて不愉快である。民主党は政権を取る時に、無駄を排除すれば2013年には16兆円の財源が出て来ると大見栄を切ってしまった手前、今は必死に仕訳を急いでいるものだが、もう民主党マニフェストを信用している国民など殆ど居ないから拙速の事業仕分け手じまいして、早く日本の将来を見据えた事業見直しに舵を切って欲しいものである。