大相撲

　折角楽しみにしていた大相撲が、一億総ヒステリーのお陰で中継が中止されてしまい残念この上ない。普段なら用がない限りは5時前にはつまみを並べてテレビの前で一献が始まるのだが、今場所はダイジェストで6時過ぎから纏めて放映するから面白くも何ともない。酒の肴にもならない。聞く処に寄ればNHKに放映中止を要求してきた視聴者の大部分は日頃大相撲のテレビ中継は観ない人のようである。自分が観ないのなら放っておいて欲しいものだが、傍迷惑でお節介な暇人共である。
　ダイジェストだから懸賞がどうなっているかは全然分からないが、懸賞は半減しているそうである。呼び出しの浴衣の背中からは確かに企業名が消えている。そこまでせずともと思うが各社ともモンスター視聴者に怯えているのであろう。大政翼賛会ではないが、何時でもすぐに全体主義に馴染んでしまう日本人の性格を垣間見る気がする。他人と異なる意見を吐けば、よってたかって村八分にされてしまうのだ。
　今場所は未だ二日目だが、豊真将、稀勢の里、琴欧洲が良い相撲を取っている。何れも負ける時には別人の様に脆いから、今場所の今後を占うには時期尚早だが、このまま良い相撲を続けて欲しい。好きではないが魁皇も強い。この頃の魁皇は一時よりも強くなった気がする。自分の型が一層はっきりしてきて、型に持ち込めば滅法強い。型に嵌らなければあっさり負けてしまうのが却ってボロボロの身体にも良いのであろう。逆にここのところ毎場所良い相撲を取っていた垣添の影が薄い。賭博で名前が出たのが響いているのであろうか。謹慎にもならなかった微罪なのだから、気にせずに相撲に集中して欲しいものである。把瑠都も大関になってから、何だか大味で乱暴な相撲になってしまった。今日もあっけなく負けた。折角相撲が上手くなったと思ったのに、また逆戻りしてしまったようである。この力士の場合は並はずれた体力があるのだから、余り勝ちに拘らずに良い相撲を心掛けていれば自然と星が付いて来るであろうに。
　そして一人横綱の白鳳が何処まで勝ち続けるのかが、今場所の興味の一つである。今日で34連勝。明日勝てば朝青龍の作った平成の連勝記録に並ぶそうだ。更に今場所は史上初の三場所連続の全勝優勝も掛っている。この横綱は何時も言うが、外国人とは思えない、風格のある良い相撲を取るので、特に贔屓という訳ではないがつい応援してしまう。明日勝てば白鳳が憧れる双葉山の連勝記録の半ばを越える事になる。未だ序盤ではあり、恐らく明日はは問題なく勝つであろう。単に強いだけではなく、品と風格のある大横綱になったものである。
　各力士には、世間の野次馬のヒステリックで無責任な野次には惑わされず、自我が曖昧なNHKやスポンサー企業などは放っておいて、良い相撲を取って少しでも本場所を盛りたてて欲しいと陰ながら念じている。