baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 具体策の見えない菅総理の雇用増

 今日から始まった衆院予算委員会で、菅総理が景気浮揚に関して、雇用拡大を通して経済成長を図り脱デフレを実現すると表明した。雇用拡大は誰も反対しないが、ここ二年間、現実には一向に拡大しない。理由は、今でこそ社民党が与党から外れたが、連立政権内に留まっていた頃に社民党主導で民主党も同調していた「労働者派遣法改正」案の去就が未だにはっきりしない事、国内産業の空洞化が加速している事、企業の業績には回復の兆しが見え、銀行の業績も急回復しているので二番底の脅威は遠のいたと思うが、国内の消費は相変わらず延びていない事、等が挙げられよう。
 雇用が増え、国内消費が伸びれば景気が回復する事は誰にでも分かる自明の理である。しかし、どうやって雇用を拡大するのかが正に政治である筈だが、菅総理の発言にはその部分の具体性が全く欠落している。耳障りの良いお題目を具体論抜きで唱えるのは鳩山由紀夫の十八番であったが、今最も重要なのはどうやって雇用を拡大させるかの具体的な議論を始める事である。さもなければ、菅首相も結局は鳩山首相と同じ穴の狢になってしまう。
 雇用を増やすには企業の業績を伸ばし、企業が国内で投資を増やし、従来の右肩上がりの経済から脱却した柔軟な雇用形態を保証する事が肝要であると僕は思っている。企業業績を伸ばす為には、早急に法人税を下げ、エネルギー料金や港湾、空港の使用料を見直し、無意味な官庁の為にするルールを簡素化するなどの、国際競争力の強化を図らねばならないという僕の持論は、既に本ブログに何度か書いている通りである。企業が儲かる環境を整備しなければ、国内投資の拡大、それに繋がる雇用の拡大はあり得ない筈である。そして現実に、昨日のニュースによれば、今年3月期の財務諸で国内、海外それぞれの資産を開示している主要企業660社については、資産の3分の1超が海外資産になっていると言う。しかも45社においては海外資産が国内資産を上回った、とも言う。海外資産が国内資産を上回る企業はこの1年間で20%増えたそうである。中には海外資産が85%を占める企業もあるそうだ。
 これだけ海外での企業活動が活発になれば、従業員数にも当然反映される訳で、外国人従業員の方が多い企業も珍しくないう。このまま国内の経済政策を無策のまま放置すれば、海外資産の増加に歯止めは掛らないであろう。今や中国の競争力に陰りが見えれば、直ぐにベトナムインドネシアだタイだと、第三国には目を向けても国内に回帰する動きは出て来ない。実際には海外進出は目に見えないコスト増を招く事も少なからず、国内の環境が整備されれば必ずしも海外シフトに繋がる訳でもあるまい。商品により、輸送コストと販売単価の兼ね合いや原料調達などとの関連で、海外進出が必然の業種も当然あるが、政府が国内の投資環境改善に本腰を入れれば、現在の国内産業空洞化の流れに棹を差す事は充分可能だと僕は確信している。しかし現実には、何とも空虚な言葉の応酬ばかりで具体論がなく、歯痒いばかりである。