baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 不気味な米国の金融緩和

 米国の景気回復が思うように行かず、FRBが一層の金融緩和を実行すると言う。元々オバマ大統領は、米国の景気回復には時間が掛ると正直に国民に忍耐を要求していたが、国民の方はどこの国も一緒で、結果を早く求めようとする。そんな米国では先日の中間選挙民主党が大敗を喫してしまった。斯かる世相を背景に、FRBの追加金融緩和策の決定である。
 米国の金融緩和の影響が庶民の日常生活に直接反映されるのは、我が国では取り敢えず円高ぐらいなので、我々には余り関心が湧かない。しかし実態は背筋を寒からしめる危険を孕んでいると思う。つまり1998年のアジア通貨危機の時と同様に、過剰な市場の資金が行き場を失い、桁違いに大きな金額が短期利益を求めて右往左往する訳である。商品相場にも既にその影響があると思う。金の史上最高値の更新、綿花の歴史的高値、石油の5年ぶり位の高値更新、等々すでに投機資金が商品市場に流れ込んでいると思って間違いはなかろう。
 投機資金は、文字通り投機目的である。短期の利益を追求するだけの、モラルにも世界景気にも一切関与しない、利益追求だけの利己主義の塊のような資金である。しかしその規模は膨大である。1998年にインドネシアのルピアが実に数週間の間に8分の一にも暴落し、インドネシアの金融業界が壊滅してしまった引き鉄は、ジョージ・ソロス率いる投資ファンドの為替への投機であったと言われている。膨大な投資ファンドの資金が狭隘なアジア市場に流入し、通貨危機が引き起こされた結果、インドネシアでは一民間銀行を取り潰さざるを得なくなった。その民間銀行閉鎖が、取り付け騒ぎと更なるルピアの暴落、ルピア金利の暴騰を招いてしまった。短期金利は一時70%を越えていた。
 節操のない投機資金は危険この上もない。しかもその資金規模は新興国の体力では全く太刀打ち出来ぬほど膨大である。商品相場への影響も大きい。だからと言って庶民には手も足も出せぬ別世界の話であるが、投機資金を国際的に規制して商品相場などを恣意的に操作する事を禁止しないと、世界経済が彼等の餌食になってしまうのではないかと真剣に危惧するのである。EUでは既にその動きが始まっていると聞く。アジア、特に東南アジアでも早急に具体的な対策を講じないと、米国の過剰資金がいつ何時東南アジアへ流れ込んでくるか分からない。日本は東南アジア諸国に対して、緊急時の融資を通じて為替安定化を図る合意を結んでいるが、その程度では現在の米国の過剰流動性には対抗出来ないのではないか。自由市場経済の根幹を傷付けぬように、しかし何らかの形で外国為替、株式市場、商品相場等への介入、或いは規制が出来るようにしておく事が必要であるような気がしてならない。斯かる高度な戦略と知識と経験が求められる処でこそ、日本が期待される場があるのではなかろうか。