baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 東京都青少年健全育成条例改正案

 東京都が、昨今のポルノマンガの目に余る性描写を青少年の目から遠ざけようと、青少年健全育成条例を改正したいとしたのに対して、一旦は都議会を牛耳る民主党以下の野党に潰されてしまった。しかし東京都は諦めず、今般内容を大幅に緩和した改正案を再度都議会に提出した。かなり骨抜きになってしまったようだが、それでも改正するとしないとは大違いだと思う。
 元々都議会多数派の民主党は自公に対して反対の為の反対をするから、築地市場の移転問題のように現在の建物の老朽化が進んでいて既に崩落を始めているのに、代案がないまま反対して徒に時間を浪費させたりする。まるで世界一危険な基地と米軍自らが認めている普天間基地移設を、徒に引っ掻き回した挙句に結果として現状を固定化させてしまおうとするのと同様で、全く無責任な政党である。本件についても、当初の反対はそんな無責任な反対であったと思う。それ以外の、奸賊とも言える社民や共産の泡沫野党は問題外として、それでも今回の改正案はやっと議会を通りそうなところまで漕ぎつけたようで、僕は喜んでいた。ところが、漫画家達が表現の自由を侵害されると反対声明を出し、あろうことかそこには良識的だと思われる一流の漫画家までが名を連ねているというので、少なからずがっかりしている。
 別にマンガに限らず、表現の自由というのは自ずと作者の倫理観から生まれる節度があるべきである。表現の自由をタテにして何でも好き勝手に表現して良い筈が無い。今回の都の改正案が目標にしているのは、昨今のマンガの余りにもドギツイ性行為の規制である。僕は押しも押されもせぬマンガの愛読者であり、海外駐在時代も途切れることなく、半世紀以上に亘ってマンガを読み続けて来た。いまでも数種類の愛読雑誌の発刊日には必ずコンビニに買い出しに出る。その僕でも目をそむけたくなる、だから実は殆ど目にしていないのだが、ドギツイ、リアルな性行為の描写が昨今の青少年向けのマンガの中には出て来るのである。それも高校生くらいの主人公である。
 作者に創造力が決定的に欠如しているので、青少年の劣情と好奇心に訴えて売り上げを伸ばそうとし、またそれに便乗して利益を追求せんとする悪徳出版社がある訳である。幾らマンガと雖も、いやむしろマンガであるから誇張が入って、正視に耐える絵ではない。この手のマンガは青少年に見せても百害あって一利もない。こんな出版物を野放しにしておいて、他方で中学生や高校生の妊娠や、若い青少年の性犯罪を社会問題にするのは文字通り片手落ちと言うものだ。。
 ところが、これに対して漫画家が反対声明を出したと言う。創造力が欠如していて、こういうマンガを規制されると生業が成り立たない三文漫画家が反対するのなら僕も目くじらを立てる事はないのだが、この反対声明に「ちばてつや」や「やまさき十三」と言った良識があると信じている漫画家が名前を連ねているのである。彼等の様な一流の、しかも高尚なマンガを書く人が、どうして劣悪なポルノマンガの擁護をするのか僕には理解出来ない。本当に昨今の劣悪なポルノマンガを見た事があるのかすら、疑いたくなる。その上で敢えて反対しているのなら何をか言わんやだが、そうではなくて単に漫画家同志の互助精神で反対しているのであれば、目を覚まして欲しい。
 文学にも純文学とポルノ小説があり、ポルノ小説は時々出版禁止になったりしているが、純文学の作家がそれに一々反応したりはしない。マンガも同様、高尚なマンガとポルノマンガに分けて、高尚なマンガを描く漫画家にはおよそ別世界のマンガなのだから、徒にポルノマンガの擁護はしないで欲しい。僕は、劣悪な図書を規制して若い未熟な精神に徒に劣情を抱かせないような仕組みを作る事は、我々大人の責任であると思うのだ。何事であれ「自由」は、節度ある自制が働く事が前提で認められ、それで社会が成り立っている事を忘れてはならない。今回の漫画家の反対声明には、権利の主張ばかりで義務を放棄している、モンスターペアレンツに通じる昨今の風潮が反映されていると思うのだが、僕が好きな一流の漫画家にはそんな風潮を後押しして欲しくないのである。