baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 シャーベット雪を走った時のこと

 実は今朝、急遽ジャカルタに出掛けた。それで、比較的朝早く家を出たら吃驚した。道路が真っ白で、まるで薄っすらと雪が積もっているように見えた。しかし良く見ると、道路が一面凍結しているのであった。東京でこれ程道路が凍ったのは久しく見た事がない。昨晩は相当温度が下がったのであろう。キャリーバッグを転がしながら幹線道路を目指して歩き始めたら、靴が氷にくっついて歩きにくかった。
 タクシーに乗ったら運転手曰く、夕べの雨が凍って、今日は事故が多発してますよ、自分も4時に出庫したけれど滑って怖かった。笹目橋ではトラックの4重衝突があったらしい、と話してくれた。僕は昨日は、午前中は小雪の中を近所まで出たので天気が悪かったのは知っていたが、夕べ雨が降ったのは知らなかったから、あぁそうですか、と聞いていた。
 新宿からリムジーンバスに乗りお堀端を通ったら、首都高から見えるお堀が未だ一部凍っていた。東京で氷を見るのは何年ぶりであろうか。急に子供の頃の事を思い出した。小学生の頃は、道路の水溜りに張った氷を踏み砕くのが楽しくて、学校の行き帰りに氷を探して歩いたものである。
 無聊なリムジンの中でそんな事を思い出しているうちに、数年前の出来事を思い出した。時は3月のお盆の頃、もうすっかり春になっていた。春の陽気に釣られて、勇躍バイクで出掛けた時の事である。別に急ぐ旅でもないので、中央高速を相模湖の辺りで下りて、甲州街道上の原まで走り、そこから丹波・小菅方面に右折した。未だ川の土手や道端には雪が残っていたが、道路は乾燥していて雪も消えている。春の陽気が気持ちよく、日陰の凍結さえ気を付ければ快適なツーリングであった。
 ところが峠の頂を過ぎて北側の斜面に入った途端に、足元は10cm程度の根雪がシャーベット状になっていた。下りの山道で、其処彼処にヘアピンカーブがある。日陰ではアイスバーンになっている場所もある。殆ど車も走らないと見えて、轍もあまり残っていない。ちょっとアクセルを吹かすと、後輪がグニュグニュと横滑りする。ブレーキなどとても掛けられない。こんな処で転倒したら、足元は覚束ないし、一人ではバイクを起こす自信がない。ところが殆ど、と言うか全く人も車も見当たらない。正直怖かった。結局5kmぐらいのシャーベット道路を30分以上掛けて、1段か2段ギアでエンジンブレーキを使いながらほうほうの体で下りたものである。その間、対向車が数台、バイクが別々に2台、2台とも外人ライダーで、おっかなびっくり山を登って行った。あちらも引くに引けずであったのであろう。
 僕の方は、山を下りてしまえばもう雪もなく、無事に奥多摩経由で転倒もせずに家まで戻れたのだが、あの時のどうしようもない恐怖感は今でも思い出すとぞっとする。バイクが重いので、シャーベット状の坂の上ではユーターンする度胸もなかったのである。そんな事を思い出させる今朝の東京の冷え込みであった。コートも着ずにそんな処を歩いた後のジャカルタは、幾ら慣れているとは言えその暑さは流石に半端ではなかった。機内放送では、夕方5時で未だ30度と言っていた。