baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 中東の民主化運動

 ジャカルタは今日は朝から雨が降り、雨が上がった後も珍しく終日どんよりとした天気であった。インドネシアと、子供時代をジャカルタで過ごした米国のオバマ大統領は、互いに親近感を持っているようであるが、そのオバマ大統領がエジプトの政権交代を、ベルリンの壁を取り払った市民運動スハルトの独裁体制を転覆したインドネシア学生運動、と並ぶ輝かしい市民運動の勝利と賞賛したそうである。僕が一昨日の本ブログでやはり、ムバラク政権の崩壊をスハルト政権の崩壊にダブらせたばかりだったので、何だか可笑しかった。
 ところで、チュニジアに始まりエジプトの政権交代を果たした中東の民主化運動は、益々広がる様相を呈している。周辺には独裁国家や王政国家がひしめいているのだから、何処へ飛び火しても面妖しくない。取り敢えずデモが飛び火しているアルジェリアはブーテリカ大統領が政権を取ってから既に11年だが、これは未だ短いほうである。同じくデモが、それもアルジェよりも大規模に起きているイェーメンのサレハ大統領は20年、近年益々独裁制を強めている様である。イェーメンでは大統領を侮辱する発言を公の場ですると罪になるそうだが、これはスハルト時代のインドネシアでも一緒で、外では「スハルト」と固有名詞を口にすることすら憚られたものであった。リビアカダフィは政権を取って既に41年、シリアのアサド大統領は父親からの世襲なので通算41年、そして王政のヨルダンとサウジアラビアに至っては、何時を建国とするのか良く分からないのだがヨルダンは1949年、サウジアラビアは1932年とするようである。いずれも部族間の抗争を経てきた王家であるから、その歴史は古く、嘘か誠かヨルダンに至ってはイスラム教の最後の預言者ムハンマドの娘と従兄弟の結婚にまで遡るそうであるから、既に1400年の家系である。日本の天皇家のようなものであるが、その王家の王が未だに国を支配している訳である。
 何れもイスラム教を信奉する国であり、生活環境が厳しい分、イスラムの戒律が厳しく残っていると言える。それが西欧の目から見ると非近代的であり、男尊女卑であり、民主化が遅れている事になる。しかし実際には、例えばサウジアラビアの2,400万人の人口のうちどれだけが本来のアラビア人であり、どれだけが移民であるか僕は数字を持っていないが、サウジアラビアへ行けば労働者は先ず移民であり、サウジの人は余り働いている風がない。握手をすれば、勿論相手は男しかいないのだが、箸より重いものを持った事がないような柔らかい手をしていて、いかつい顔つきからは想像も出来ない。或いは、ヨルダンの人口580万は、半分以上が中東戦争以降流れ込んできたパレスチナ難民であると言う。恐らくヨルダンもサウジ同様、元々のヨルダン人はそれなりに文化程度の高い生活をしているのではないかと想像するのである。それだけに、国民の中の格差は相当あるであろう。だからと言って、欧米が一方的に決め付けるほど非文明的かどうかは僕には知見がない。何れにしても、一旦火のついた民主化の動きは中々止まらないであろうから、独裁政治家や王家にとっては由々しき事態に陥っていると言える。
 ここまでは、既にメディアでも色々とニュースになっている。しかし僕は、この動きは単に中東に留まらず、更に中央アジアにも及ぶのではないかと思っている。中央アジアと言えば、元はソ連に組み込まれていた「〜スタン」の国々、即ちカザフスタンウズベキスタントルクメニスタンキルギスタン、等である。これらの国々もソ連が崩壊した1991年頃から、数年前に大統領が頓死したトルクメニスタンを除いて、まともな選挙もないまま同じ大統領の独裁が続いている。トルクメニスタンがその後どうなっているか聞こえてこないが、恐らく大統領が変わっても体制には大きな変化はなかったと思う。そして、どういう訳かこれらの国々もまた回教国家である。普通に酒も飲むし豚肉も食べるが、それでもれっきとした回教国なのである。
 全部の国に行った事はないので断言は出来ないが、一般に生活環境の厳しい国であると思う。空から見れば土漠が延々と続く国土である。内陸なので冬は寒さが厳しく、夏は暑い。そして、一様に人々は貧しく、大統領の一族とそれを取り巻く一部の人間だけが特権と豊かさを享受している事は共通している。政治は一部の人間の利益のみを追求し、官僚は腐敗し切っている。にも拘わらず、これらの国の民衆は未だソ連時代の、共産党独裁の恐怖政治に萎縮したままなので、民主化運動が起きるには時期尚早かも知れないが、インターネットやフェースブックでニュースや民主化運動への共感があっという間に広く伝播する現代では、想像以上に国民が民主化に目覚めているかも知れないと思うのである。ただ、独裁性が崩れ民主化が進めば、南のアフガニスタンパキスタンからテロリストが潜入しやすくなってしまう事が怖い。今でも多少のテロリスト潜入はあると言われるが、独裁制の特徴はそういう反体制派の人間は否応無しに抹殺できるから、今の処テロリストの温床にはなっていない。テロリストは排除しつつ、と言う事は別の言い方をすれば公平に社会を豊かにしつつ、上手く民主化を進めて欲しいものである。