baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 お化けのお伽噺〜ニィ・ロロ・キドゥール

 インドネシアは今日も朝方雨が降った。この雨の降る時間がどんどん早くなり、早暁に雷が鳴るようになると雨季が終わる。通常なら後一月程なのだが、最近は天候が乱れているので良く分からない。そう思って思い返せば、毎年今頃はジャカルタは一度や二度は大洪水に見舞われるのだが、今シーズンの洪水は去年の秋に来てしまったからか、今は雨は降っても殆ど洪水は見当たらない。水捌けの悪いところに20〜30cmの深さで水が溜まっている程度である。
 久しぶりに旧友と昼食を共にした。もうインドネシアに何十年という日本人である。彼は最近体調を崩し、占い師に見てもらったそうである。話を聞いていたら、この占い師は中国人なのでドゥクンとは呼ばないが、能力的にはドゥクンと同じようである。占い師曰くは、日本の家の間取りが悪い、と言って勿論見た事もない家の間取りを書いて、悪いところを指摘したそうである。この話を聞いて、以前本ブログに書いたドゥクンの事を思い出したのだが、ブラックベリー全盛で、誰でもブラックベリーフェースブックに余念のないインドネシアだが、反面未だにこういう人が活躍していると言う現実を、改めて再認識した。その占い師の言葉を聞いて、旧友は親不孝とは知りながらここの処暫く実家から遠ざかっていたら、大分体調が戻ってきたそうである。信じない人は、心理学に長けていれば上手に質問しているうちに答えを誘導できる、とか、体調が戻ったのは偶々そういう時期だったのだ、とか反論は幾らでもあろう。しかし薬も使わずに病気が治れば、それに越した事はないから、体調が戻ってそれはそれは結構でした、と言う話である。
 インドネシアにはニィ・ロロ・キドゥールと言う有名なお化けがいる。誰でも知っているジャワのお化けである。未だに健在で、そのお化けが棲むプラブハン・ラトゥと言う漁村では、今でも緑色の物を身に付けて海に出ると海に呑み込まれてしまうと信じて、絶対に緑色の物は着用しない。観光客が観光船に乗るときに緑色の着衣を付けていると、乗船拒否される。ところが、このお化けの伝説を正確に知っている人が中々いないのである。インドネシア人なら誰でも知っている話なのだが、正確なストーリーを知っている人が少なくとも僕の周りにはいなかったのである。如何にもインドネシアらしい、大らかな話である。
 僕は昔、この話がちゃんと知りたくて随分本屋を探した。当時は今ほど出版物も多くなく、色々探した挙句に見付かったのは小学校の国語の教科書であった。早速買って読んだのだが、子供に語れない部分があるのか、或いは話を省略し過ぎているのか、どうにも納得し難い話に仕上がっている。そこで、もう少しちゃんとした本で読みたいと思って探したのだが、今まで見付からなかった。今日、用があって本屋に行った時に、旧友の占い師の話に触発されてこの本の事を思い出したので、また探してみた。
 インドネシアの本屋も今は目覚しい進歩で、店員がパソコンで直ぐに検索してくれて、自分の店では売切れているが何処其処の支店に行けばある筈、と教えてくれた。それ程遠くない店なので、1冊取って置いてくれるように頼んで貰った。その足でそちらの店に行ったら、もうbaiksajaの名前で一冊カウンターに置いてあった。長年の欲求不満が一挙に解決した様で、嬉しかった。170ページ程の本で量的には大した事はないのだが、小説やお伽噺でのインドネシア語は、日本語以上に普段使わない古語や言い回しが沢山使われるので、辞書を片手に読破するのには少々時間が掛かりそうである。また楽しみが一つ増えた。