baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 佐々淳行著「彼らが日本を滅ぼす」

 今日はバイク日和そうだったので、昨晩までは久しぶりに遠出をしようと考えていた。ところが眼が覚めてみればもう10時近い。金曜日にジャカルタから夜行便で戻り、家に着いても休む間もなく仕事で銀行へ行き、知り合いの写真展に出掛け、そのまま夜は仕事の食事が二次会のカラオケにまで流れてしまったのであった。昨日も昼間に会合があり、昼間から飲み始めてそのまま夜まで飲んでいたから、飲み疲れもある。何よりも最近飛行機に乗ると疲れるようになった。以前は飛行機の中が電話や仕事から解放されて一番休まる空間であったのだが、最近はそうでもないのが情けない。と言い訳ばかりだが、すっかり寝坊してしまったのである。
 仕方が無いので遠出は諦めて、昼から標題の本を読み始めた。佐々淳行は、昔彼が警視庁警備課や内閣安全保障室長時代に直接指揮した、東大安田講堂攻防戦や連合赤軍あさま山荘事件について「文芸春秋」に書いていたのを読んだ事がある程度である。その時の印象から、非常な自信家で、自己顕示欲の強い体制派の人物だというイメージを持っていた程度で、その後は特に注意を払っていた訳ではない。しかし、本の題から勿論「際物」である事は承知していたが民主党政権の政治に日々不満を抱え日本の将来を憂いている昨今、この人がどんな事を言っているのかに興味を持って敢えて註文したものである。調度金曜日に届いていた。
 全6章からなる本書は、基本的には僕がこのブログで散々書いて来た事と、随所で重なっている。勿論僕のブログに比べれば取材もしっかりしているし知識も経験も豊富だから、比較する事自体がおこがましいのだが、その文脈においては僕の思考と酷く符合する事ばかりである。我が意を得たり、と言った記述が多い。第1章は尖閣諸島沖の中国漁船体当たり事件についての民主党政権の対応批判である。僕は今まで「衝突事件」と書いていたが、佐々は中国漁船の故意による公務執行妨害だから「体当たり」だと言う。僕は余り深く考えることもなく、メディアの言葉遣いをそのまま流用していたが、言われて見ればその通りである。その主張は僕と同じく弱腰外交を非難したものである。第2章、第3章はそれぞれ危機管理能力のない民主党政権、詐欺の如く票を集めた衆院選マニフェスト、に対する批判である。そこでは「危機管理意識も能力もない、何をすればいいのか誰も分からない内閣」と、僕が何度か本ブログに書いたと同じ調子の批判が続く。
 第4章は民主党政権幹部の個人的な批判である。単なる批判ではなく、それぞれの生い立ちにも触れて、結局民主党政権全共闘社会党民社党日教組労働貴族を拠り所とする左翼政党であると断じている。小沢一郎鳩山由紀夫の中国に対する朝貢外交、三拝九叩頭、非現実的な友愛外交、を鋭く批判する。僕をして小沢一郎を「平成のラスプーチン」と言わしめた、習近平宮内庁の意向を無視して強引に天皇に拝謁させた暴挙に憤っている。東工大全共闘の扇動演説は上手であったが、機動隊が入ると常に後ろに隠れて最後まで逃げ果せた菅直人は、未だに重要な事項は全て仙石由人や岡田克也、関係閣僚に任せて責任を自分では一切取らない、外交では全くの腰砕けで昨秋のAPECでは大恥を掻いたと糾弾する。元東大全共闘で、25歳から左翼活動家の弁護士として腕を鳴らし、その後政治家に転身した仙石由人については、余程腹に据えかねるようで一番ページ数を割いて批判している。そして、彼らを総称して婉曲に「売国奴」と断じている。ここまでは、その調査の綿密さは僕の及ぶ処では勿論なく、表現の違いもあるが、本質的な論調には全く違和感が無く僕のブログと随所で一致している。更には僕が「衆愚政治」に例える衆院選については、「今、雪崩を打って反民主に傾く日本の有権者たちは、(中略)悪口を言う前に自己批判しなければならない」と有権者に釘を刺す事も忘れていない。
 第5章では日本の海防、国防について論じている。この章は僕には興味深かった。先ず日本には「領域警備法」とか「領海法」と言った自国の海域を護る法律がないから、仮に中国や北朝鮮が領海侵犯してもその事実だけでは海上保安庁自衛隊も法律上は対抗出来ないそうである。だから、違法操業とか入国管理法違反などの軽微な罪を問うしかない。しかも先方が先に攻撃して来て正当防衛が成立しないと、こちらは武器は使用できない。或いは、相当の重罪犯が逃亡する惧れがある時に限って武器の使用が認められるのだそうで、違法操業や入管法違反などの軽微な犯罪では対象外なのだそうである。要するに国内における警察官の拳銃使用と同じ法律が適用されるのだそうである。何とも呑気な話で、これでは日本の国土は守れない。例えば武装中国人が領海侵犯した挙句に尖閣諸島に上陸しても、向こうが武器を使わない限りはこちらは使えない、と言うのである。それではどうするのか、入国審査官が「パスポートを提示しなさい」と丸腰で応対するしかない、という笑い話があるそうである。佐々は領海侵犯を取り締まる法律を早急に整備する必要があると説く。勿論大賛成で、全く異論はない。と同時に僕は、臨機応変に現場の判断で武力行使を出来るようにしなければならないと思う。さもないと、遠からず海上保安官に無用な犠牲を強いる事になるであろう。
 最終章は、自民党民主党では日本の政治は担えないと言う彼の悲憤慷慨である。第三の、真の保守政党の台頭を待望している。そして、盟友である石原慎太郎の功績、並みの国会議員には見られない深い洞察力と実行力などを、共に行動した経験を通して語り、彼の描く「望まれる人物像」を示唆している。国防に関しては、軍事紛争にエスカレートさせない為に、未だ東アジアでの自衛隊の武力が中国に勝っている中に、尖閣諸島の実効支配を強化する事、海の警察力である海上保安庁の船舶と武装を強化して自衛隊の出番を無くす事、などを提言している。海上保安庁の装備は外国の沿岸警備隊に匹敵するものとすべきであると言う。その主張には僕も反論はない。
 しかし、党内の分裂の危機に瀕し、来年度予算関連法案の成立の成算もなく、小沢一郎問題にすら説得力のある決着が付けられていない菅政権に、こんな戦略的な決断が下せるとは夢にも思えない。無能無策政権には対応不可能な難事ばかりである。しかし2013年には中国の空母第一号が就航し、それから数年で空母4隻、空はステルス戦闘機700機体制になる予定である。中国がそこまで近代化してからでは、もう自衛隊、増してや海上保安庁では、領海警備も尖閣諸島支配も難しくなる。日に日に凶暴な本性を剥きだしている隣国中国に、何時までも民主党政権に国政を委ねて手を拱いている時間はない。防衛力の強化と尖閣諸島のより踏み込んだ実効支配の強化は今日から始めなければならないのである。と同時に竹島問題を今のように放置しておいてはならない。このままでは、本当に韓国の実効支配が既成事実になってしまう。