baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 信用されない日本の総理大臣

 菅直人がフランスのG8に出席したので、恥を掻かないで欲しいと念じていたのだが、やはりやってしまった。
 総理大臣になれて嬉しくて仕方がないのが顔に出てしまう菅直人は、要人と握手する度に満面の笑みで、相手の頬笑みとまったく釣り合いがとれていない。幾ら外交慣れしていない素人だとは言え、雰囲気で分かるだろうに、誰とでもまるで寄席で笑っている様な顔で握手する。旧知の仲で、お互いに再会が嬉しくて自然に顔が笑ってしまうのなら良いのだが、菅直人と仲の良い外国要人など一人といない。相手も気を遣ってそれに応えてくれていれば良いが、欧米人は中々自分の主義を曲げないから、見ていると東洋の田舎者丸出しで恥ずかしくなる。
 しかもメドベージェフなどとは、そもそも笑顔で対する相手ではなかろう。それが証拠に、向こうは笑顔も見るからにお義理である。北方四島の問題でこれだけ一方的にやりたい放題やられているのに、どうして笑顔で握手が出来るのか、その神経が理解出来ない。G8という立派な場に出られて嬉しくて仕方のない菅直人の頭には、北方四島の問題など欠片もなかったのかも知れないが、日本人としては何とも情けない。これではこれから益々舐められる。
 その菅直人が冒頭の演説で、福島原発事故の徹底的な原因解明とその結果の公表を約し、同時に2020年代のなるべく早い時期に自然エネルギーへの依存度を20%以上にすると発言したそうである。原発事故の原因を究明しその結果を世界へ公表する事は、今や日本の当然の義務である。IAEAが査察に入っている事もあり、なにも今更肩肘張って力説するような事ではなく、むしろ世界を騒がせた事を詫びると同時に風評被害に対する誤解を解く事に力を入れて欲しかったが、まあそれは良しとしよう。前の日に海水注入中断があったとか無かったとかで、既に世界中に大恥を掻いた日本であるから、聞いている方は鼻の先でせせら笑って居たかも知れないが、総理大臣としてその責務を世界に明確にしておく事は別に構わない。
 問題は自然エネルギーの下りである。福島原発事故を受け、各国のエネルギー政策にはそれぞれお家の事情が異なりそれなりの思惑がある。そんな折に、どうして日本が率先して米英仏露の原発主要国に水を掛けるような事を言う必要があるのであろうか。しかも、この問題は日本国内でも未だ何らコンセンサスが得られていない、いかにも空虚な話である。数字にしたところで、20%以上などと言うのは菅直人の単なる思い付きで、全く根拠がないそうだし、担当大臣の海江田万里ですら事前に一言の相談もなかったと言う。
 日本は日照時間には恵まれているが、土地が狭いから現在の発電効率では太陽光発電に対する依存には限度がある。一方風力発電も実は広い土地が必要で、人間が風が強いと感じる程度では不十分で、風が吹き抜けられる広さが必要だと聞く。更に風力発電は騒音や低周波の公害問題があり、人家から離れていなければならない。従いどちらも今の技術と日本の立地では補助的な意味しかなさないから、これで20%だとか30%だとか言うのは余りにも時期尚早なのである。にも拘わらずこういう発言をしたと言う事は、主要各国の要人の前で単なる思い付きを喋って、各国の政治的な思惑に冷水を浴びせた事にも気付かずに、菅直人一人が舞い上がっていたのである。各国首脳はもう日本の総理の空虚な演説には慣れているから、極めて冷やかな反応であったと言う。
 鳩山由紀夫が、これも国内では一切コンセンサスの取れていない、2025年迄に1990年比25%のCO2削減を達成すると国連でぶち上げたのは未だ1年半前の事である。それから半年で鳩山は総理を辞任したから何とも軽い話になってしまったが、数字だけは未だに独り歩きしている。菅直人も何時まで総理でいられるか分からないが、彼が総理の座を下りてからも今回の数字は独り歩きする。誰も相談もされていないし、コンセンサスも取れていない数字である。しかも菅直人は「俺は2030年迄に30%にすると言いたい」と最後までごねたらしいが、全く根拠のない数字だからと随員が必死に止めたそうである。良く止めてくれたものである。その随員には勲章を出してやりたいものだ。
 日本は世界第二位の経済大国である。数字の上では中国に二位の座を明け渡したとは言え、実力は未だ第二位である。その国の宰相と言えば、その一言一言が世界に影響を与え得る極めて重要な地位である。オバマの演説は、例え国内向けであっても即座に世界中が反応する。日本はそこまでの大国ではないが、やはり世界が常に注目している。その国の総理が、国際会議の場で単なる思い付きを発言すると言うのだから、幾ら政権に不慣れな素人宰相とは言え国辱物である。
 本来なら国力に見合った、しっかりした内容の、世界をリードする様な演説をすべきなのである。それでこそ、国民も日本人である事に誇りを持ち、国際社会で自信を持って責任を果たせるのである。しかし昨今の素人宰相にはそんな事は望むべくもないから、拍手喝采を浴びる様な演説をしろとは言わないが、少なくとも皆が白け返る様な演説だけはして欲しくなかった。どうして選りに選ってこんな人が総理大臣なのであろう。もう「殿、ご乱心」の域である。