baiksajaの日記

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 インドネシア向け成牛輸出解禁〜今夕豪州政府が発表

 先月の本ブログで書いた、豪州政府の対インドネシア成牛輸出禁止の措置が本日解除されたとのニュースがNHKテレビで流された。僕のブログは6月3日付なのだが、NHKによれば輸出停止は6月8日の決定だと言うので、6月3日の時点ではインドネシア側が少し先走って書いたものなのかも知れない。ただし当時のインドネシアでは、既に豪州政府がそういう決定を下したと言われていた。インドネシアの屠殺方法が余りにも残酷だと言う理由であった訳だが、その時には僕にも具体的にどのように残酷なのだかは分からなかった。
 今日のHNKの放送では、豪州で残酷だと騒がれたインドネシアでの屠殺の場面の映像の、さわりが放送された。実際にはもっと残酷な場面もあったのだと思うが、日本のテレビだからカットしたものであろう。ただその映像を見る限りでは、限りなく特殊な小規模な屠殺場での、限りなく「やらせ」を感じる映像であった。そしてその場面だけ見れば、僕でも残酷だという印象は拭い切れない酷い映像である。そこには視聴者からの受けを狙うメディアの思惑も感じられる。そもそも1000円も渡せばかなりの事が出来るインドネシアである。1万円出せば殺人だって請け負いかねない、そんな国で牛をロープで殴ったり、横倒しになっている牛の顔を蹴ったりするヤラセは、金さえ出せば誰にでも出来る事である。逆に一文の得にもならないのなら、そんな無意味な、腹が減る事をやる人間は皆無と断言出来る。
 そして誰が考えても分かる事だが、普通の屠殺場であんな遣り方をしていたら処理能力がまるで追いつかない。インドネシアの牛肉消費量の23%が豪州産の成牛を肥育した肉なのだと言う事は先月書いた。それを豪州側から見れば、何と成牛輸出の60%がインドネシア向けだと言う事である。年間で60万頭というスケールの量であるから、あんな屠殺の遣り方で間に合う筈がないのは明らかである。何れにしても、豪州で流された映像は俄かには信じられない、特殊なケースである。幾らインドネシアと雖もあんなに酷い動物虐待は、普通では考えられない。そういう背景を疑う事も無く、大騒ぎをする豪州国民のレベルは米国とさして変わらぬ程度なのかも知れない。
 他方今日のNHKの番組では流されなかったが、イスラム教に則った、牛や羊、山羊を一頭々々屠る遣り方は僕達のような、店頭で既に小分けされた肉に慣れている人間には正視に堪えないのは事実である。僕がバングラデシュ駐在時代に、近隣の住人に招待されて牛を自分の息子の身代わりに神に捧げる儀式に立ち会った時には、余りに凄惨な光景に貧血を起こしたものである。その悪夢が消えないので、インドネシアでは遠くから見る事はあっても、犠牲祭の儀式に立ち会う事は一度もなかった。
 実際、小規模な屠殺場で、ヤラセは別としても、一頭々々蛮刀で頸動脈を切断する屠殺方法は、非イスラム教徒には正視に耐えまい。しかし、苦痛を与えると言う意味では、あっと言う間の出来事であるのは間違いない。頸動脈のみならず、頸椎まで一気に切断してしまうから、痛みは殆ど感じる暇もない。そのあっと言う間までの時間に恐怖を与えるかどうかは、動物の身になってみないと誰にも分かるまい。少なくともキリストの十字架像を拝むべからずと幾らアッラーが説いても、キリスト教徒は絶対に従うまい。その裏返しが、今回の問題である。
 何れにしても、今夕その一方的な輸出停止措置が解除されたそうである。大がかりで感情的な文化・宗教論争に発展せずに鎮火した事は何よりである。