baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 野田佳彦 〜 わが政権構想

 昨日出た月刊誌に掲題の短い文章が載っていると言うので早速買って来た。別に野田佳彦を応援している訳ではないが、もし彼が次期民主党代表になったら、一体日本はどうなるのかと気になったからである。とにもかくにも、もう民主党政権は全く信用出来ないのだが、それでも朝鮮半島との癒着や血統の噂が出ない野田佳彦が、少なくとも鳩山や菅よりは未だ増しなのかと思う程度である。もっとも、民主党の議員は基本的に皆嫌いだから、未だ他の代表選候補者との比較はしていない。
 内容は極めて陳腐で穏当であった。鳩山由紀夫菅直人と続いた、夢や思い付きで政権を運営する事への反省もあるようである。二年前に政権交代した時に民主党に期待した有権者が今どれだけ失望しているかが痛いほど分かると言っている。徒に強弁する事の不利を弁えているのであろう。また「政治主導を再定義し」、「政治家と官僚の英知を結集する仕組み」を作り「役割分担を明確にしながら、任せる部分はまかせ」るようにしたいと言う。やっと官僚の優秀さと使い道が分かる人間が出て来たようである。だが、それを言うなら、何も自分が総理になるのを待たずとも、焦眉の急である円高対策で一刻も早く優秀な官僚を抜擢して全権を任せるべきではないか。「ミスター円」と言われた榊原英資も官僚であった。野田佳彦の力量では円高は抑えられない事は、既に市場が明白に証明している。所詮、素人大臣の手に負える話ではない。
 民主党衆院選マニフェストも見直すべきだと言っている。最早破綻が明らかなマニフェストなのに、マニフェストを捨てたら民主党の存在意義が無いと未だに拘っている一部の頑迷な議員に比べれば大分現実的だと言えよう。日米関係は謙虚に重要だと認め、身の程知らずの対等外交などと言う反米的な文言は出て来ない。「友愛」だとか「東アジア共同体」などと言う浮世離れした標語も出て来ない。徒に中韓に阿る事もなさそうである。
 しかし、残念ながらこの人もやはりマルドメ政治家であるようだ。産業の空洞化、原子力発電を含めたエネルギー政策の策定、財政再建を当面の三つの課題と位置付けている。しかしそこには、EPAという言葉一度出て来るだけで、外国との経済協力協定、特にTPPについての特段の見識は語られていない。領土問題については、ただの一言も触れられていない。民主党政権は、北方四島竹島は見捨ててしまうつもりなのであろうか。そんな事では尖閣諸島ももぎ取られ、沖ノ鳥島までももぎ取られてしまうのではないか。海洋権益の重大さが一向に分かっていないようである。防衛についても、おざなりな綺麗事しか並んでいない。誰がなるにせよ次期総理には、領土問題は最重要政治課題の一つとして認識して貰わねば困る。
 僅か数ページの短い文章だから、野田の本心や本性はとても読み取れないが、少なくとも今迄二代続いた、甲乙つけ難い最悪の総理よりは増しである可能性は感じられる。一方で、まだ政策のヘッドラインを並べただけの感があり、各テーマの具体論が完全に欠落しているので、下手をすれば今迄の政権同様、お題目だけで何ら実行が伴わないという事も充分あり得る。更に、自分でも言っている様にスマートでもないし、ルックスに到っては何だか根暗で何時も自信喪失している様な顔だから、日本のリーダーとしては少し情けない。
 一方で菅直人民主党の時に衆院解散に追いやって、政権交代を果たそうと目論んでいた自民党、特に自民党衆院落選議員には、このまま総理交代となるのは甚だ面白くなかろう。確かに今総選挙をやれば、民主党はまず間違いなく惨敗したであろう。しかし、かと言って今無理矢理に衆院解散に持ち込んで政治を空転させれば、それはそれで自民党への批判が強まるのは必至である。自民党としては、ここは大震災からの復旧・復興と原発事故の早期終息を第一義に、身のある政策論議で地道に民心を引き込む努力をするしかなかろう。50年間政権の座で安閑として来たツケは、そう簡単には消えないようである。