baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 信州のサロン・コンサート

 先日書いたように、今年も蓼科のサロンコンサートを手伝いがてら聴きに行ってきた。僕は山荘のオーナーにも、もう完全に演奏会の手伝いにカウントされているようで、今年も去年と同様細々とお手伝いもし、ステージ・マネジャーの真似事もしたが、舞台の袖で聴く演奏は、それは楽しいものであった。
 今年はベルギーからアレックス・ファン・ベヴェーレンというオーボエ奏者が来日し、同じく篠原ももと言うピアニストがパリから来日、それと友人の指揮者である矢崎彦太郎夫人の渡辺篤子のヴァイオリンと東京シティフィル主席奏者である長明康郎のチェロである。去年と違うのは、今年は作曲家の新実徳英夫人の新実みなこのソプラノがあった事である。今年も聴衆は100名を数え、ホールは超満員の盛況となった。恒例の矢崎彦太郎による曲目解説に加え、今年はオーボエコールアングレ−の説明もあった。
 曲目はアレックスがコールアングレーも持って来てくれたので、コールアングレ−のソナタオーボエのソロ、更にピアノ伴奏でバッハの「オーボエとヴァイオリンの為のコンチェルト」を演奏してくれた。そして休憩前に、今般の震災と津波の犠牲者を追悼し被災地の復興を祈って新実が新たに作曲した12曲の歌曲から抜粋した歌曲を1曲、作曲者の伴奏で新実みなこが歌い、次は新実みなこと一緒に会場が合唱し、最後は長明のチェロが会場の合唱にオブリガートを付けて休憩となった。休憩には山荘オーナー夫妻の心づくしのワインとスナックが振舞われるのも恒例である。
 後半はベートーヴェンのピアノトリオ、Op.70「幽霊」と、ボウスラブ・マルティヌの「オーボエ、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの為のカルテット」と、力の入る曲が2曲続いた。今年は演奏会の後半から猛烈な驟雨に襲われ、凄まじい雨音の中での演奏会となった。特にヴァイオリンは湿気が急に上がって弦が延びてしまって調弦に苦労したり、オーボエのリードが鳴らなくなるなどの気の毒な展開になってしまったが、これも普通の山荘でのサロン・コンサートの宿命である。しかしその演奏は素晴らしいもので、昨年同様、これだけの迫真の演奏が僅か100人にしか聴いて貰えないのが勿体ないのであった。
 何処で聞こえたものか、駐日オランダ大使夫妻や、元ベルギー駐在日本国大使夫妻なども来場され、すっかり国際的にもなってきた。年に一度だが、演奏家との間に間仕切りのない、何とも楽しい演奏会であった。