baiksajaの日記

目前の一秒を大切に

 自由市場経済の弊害

 昨今の為替や商品相場の乱高下を見ていると、自由市場経済の限界が見えている気がする。僕は経済の専門家ではないが、どう考えても金余りで行き場を失った大量の資金が、投機資金として市場を席巻しているとしか思えない。3年前のリーマンショックで米国を初め、欧州も、そして日本はそれ以前から、金融緩和で金利は殆どゼロにまで下がり、資金供給量は青天井の如く増え続けた。金利が付かないから資金は銀行には留まらず、行き場を求めて市場を右往左往する。その資金を吸い上げて、膨大な資金量に物を言わせて市場を動かす投資家が闊歩している。日本ではライヴドア村上ファンド国策捜査で潰されたが、世界では未だ夥しいファンドが我が世を謳歌している。
 僕の身近なところでは、この1年間の綿花の乱高下は酷いものであった。綿花にもグレードが色々あり、産地によっても値段が違うが、凡その数字を拾うと、昨年の10月は1ポンド80セントであった。綿花はかなり相場に左右される商品だが、80セントという値段は過去の平均的な価格と言える。それが突然棒上げに上がり出し、今年の3月には何と2ドル40セントなどというとんでもない史上最高値を付けてしまった。誰が考えても市場原理だけでこれほど値段が動く道理はなく、投機資金が大量に流れ込んで価格を釣り上げた訳である。ところが、この3月をピークに今度は突如下げに転じ、先月からは1ドル前後になっている。この値段の動きに応じて、その都度何か理由の説明はある。例えば値段が下がり始めた時は、米国の財政が破綻するかも知れないので厭気されたなどと言われていた。確かに当時は心理的には多少の影響はあったかも知れないが、これ程影響を及ぼす程の事ではなかった。
 そしてこの綿花価格の乱高下で、大幅な利益を得たのは間違いなく投機筋である。彼等はとてつもなく大量の資金を投入して市場をコントロールし、適当なところで売り逃げして大儲けする。その被害者は綿花のユーザ―であり、綿花商である。紡績会社や綿花商は幾ら相場を張るとは言っても桁が投機資金とは何桁も違うから、投機資金が本格的に流れ込んできたらとても太刀打ちできない。僅か5ヶ月で3倍にまで高騰した綿花は、3月末をピークに3ヶ月余りで半値以下に暴落してしまった。この動きに全くついて行けない紡績や綿花商は今、莫大な含み損を抱え込んで艱難辛苦している。
 円にしても、同じ投機資金の餌食になっているのは間違いない。各国の中銀が景気高揚の為の金融緩和策を取り続けている結果、余剰資金の一部はスイスフランと円を投機の対象にしている。暴論を承知で言えば、僕はこの際日本は徹底的に円を増刷してドルを買い続ければ良いと思う。間違いなくインフレが起きる。インフレが起きれば厭でもデフレから脱却出来るし、円相場は下がる。国債の価値も相対的に下がり、将来の償還が大幅に楽になる。インフレに喘ぐのは国民で、特に僕達の年代のような年金生活者はまともに叩かれるが、放って置いても何れは増税だの社会保障制度の破綻だので叩かれるのである。特に僕達戦後のベビーブームっ子は、生まれた時から常に楽をさせて貰えない運命を生きて来ているから「あぁ、またか」と諦めは早い。いかにも乱暴な話だが、当面はこんな対処法は如何なものかと思う。
 しかし、長期的にはやはり投機資金は絶対に規制しなければいけない。自由と言っても限度がある。いまの様に、新興国一国の一年間の国家予算を凌ぐ程の膨大な資金が一機関投資家の下に集まり、その資金が市場を自由に席巻出来る制度が続く限りは、今後もこういう理不尽が罷り通ってしまう。原則的には自由市場経済統制経済よりも絶対に良いし、これからも守って行かねばならない制度だと思うが、自由市場経済を守る意味からも投機資金に何らかの規制を掛けなければならないと確信する。